第23話 廃村
ユーシスに背中を向る私に心配して話かけて来たのはシーちゃんだった。
「いい雰囲気のとこ申し訳ないけど……陛下、いえリーちゃんのお母さんめっちゃ睨んでるけど大丈夫?」
シーちゃんがこっそりと指さした先には、ユーシスをギロッと睨むお母さんの姿。
これ、かなりヤバい状況かも。
「シーちゃんなんとか誤魔化せない?」
「やってみてもいいけど、ワタシに対する報酬は?」
「村に着いたらご飯ご馳走するから、お願い!」
「よし、乗った! ちゃんと報酬は支払ってよ」
シーちゃんはすぐさまお母さんの元へと向かった。なにやらコソコソ話しているようだけど、無事に事が運んでくれるといいな。
そんな事を思いながら待機していると、
「リーゼそろそろ出発しましょう。残念ながらマキアスは逃してしまいましたが、この際、少しでも早く目的地に辿り着き、身を隠すことが一番の安全策でしょう」
「……そうだよね、お母さん」
やっぱりマキアスさんは逃げたみたいね。
だとしたら、また私を捕らえるために動くはず。
かなり傷も負ってたし、完治するまでに時間もかかるはずだから、当分動くことはないと思うけど。
まあ、念のため村に着いたらみんなで対策を練らないとね。
私達は再びインギス村に向かって歩き始めた。
*
幾度も野営を繰り返しては歩いた。
そんな生活を続けていた、とある日の夜。
目を凝らすとそこには荒廃した小さな村があった。周囲にはなにもないただの平原が広がっていて、村の中には人っ子一人いない様子だった。
苦労してここまで辿り着いたというのに、すべてが無意味だったというの?
そんなの、そんなのあんまりだよ……。
心が挫けそうになった。
でも、皆の前で悲しんでなんていられない。
「みんなこのインギス村は諦めて、違う村に向かおう」
「リーゼここはインギス村ではありませんよ。インギス村はまだまだ先です。物資の補給をこの村でしたかったのですがこの際仕方ありません。先に進みましょう」
「ちょっといいかな? 物資なら【
せっかくのシーちゃんの提案を無碍にしたくない。だけど少しでも早く辿り着いて身を隠さなければ、この先なにが起こるかもわからないし。
「シーちゃん物資が届くまでの時間はおおよそどのくらい?」
「早くて一日ちょいかな」
「少しリスクはあるかもしれないけど、みんな疲れてるだろうし、今日はこの村でゆっくりと休むもう。もしかしたらこの村で思わぬ発見もあるかもしれないし」
「俺は賛成だ。そろそろ足も限界だったところだ。っで、ネムはどうする? いや女王陛下様はどうするんだ?」
「ユーシス、それはわたくしに対しての
「はぁ……」
ユーシスは大きくため息を吐いた。
そして荒廃した村の中に姿を消した。
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