第23話 廃村

 ユーシスに背中を向る私に心配して話かけて来たのはシーちゃんだった。

 

「いい雰囲気のとこ申し訳ないけど……陛下、いえリーちゃんのお母さんめっちゃ睨んでるけど大丈夫?」


 シーちゃんがこっそりと指さした先には、ユーシスをギロッと睨むお母さんの姿。


 これ、かなりヤバい状況かも。


「シーちゃんなんとか誤魔化せない?」

「やってみてもいいけど、ワタシに対する報酬は?」

「村に着いたらご飯ご馳走するから、お願い!」

「よし、乗った! ちゃんと報酬は支払ってよ」


 シーちゃんはすぐさまお母さんの元へと向かった。なにやらコソコソ話しているようだけど、無事に事が運んでくれるといいな。

 そんな事を思いながら待機していると、


「リーゼそろそろ出発しましょう。残念ながらマキアスは逃してしまいましたが、この際、少しでも早く目的地に辿り着き、身を隠すことが一番の安全策でしょう」

「……そうだよね、お母さん」


 やっぱりマキアスさんは逃げたみたいね。

 だとしたら、また私を捕らえるために動くはず。

 かなり傷も負ってたし、完治するまでに時間もかかるはずだから、当分動くことはないと思うけど。

 まあ、念のため村に着いたらみんなで対策を練らないとね。


 私達は再びインギス村に向かって歩き始めた。


  

 幾度も野営を繰り返しては歩いた。

 そんな生活を続けていた、とある日の夜。


 目を凝らすとそこには荒廃した小さな村があった。周囲にはなにもないただの平原が広がっていて、村の中には人っ子一人いない様子だった。


 苦労してここまで辿り着いたというのに、すべてが無意味だったというの? 

 そんなの、そんなのあんまりだよ……。


 心が挫けそうになった。

 でも、皆の前で悲しんでなんていられない。


「みんなこのインギス村は諦めて、違う村に向かおう」

「リーゼここはインギス村ではありませんよ。インギス村はまだまだ先です。物資の補給をこの村でしたかったのですがこの際仕方ありません。先に進みましょう」

「ちょっといいかな? 物資なら【墜鬼隊ダッキタイ】に任せて貰えれば、ここまで運んで来ることはできるけど、どうする? まあ、決めるのはリーちゃんだけどね」


 せっかくのシーちゃんの提案を無碍にしたくない。だけど少しでも早く辿り着いて身を隠さなければ、この先なにが起こるかもわからないし。


「シーちゃん物資が届くまでの時間はおおよそどのくらい?」

「早くて一日ちょいかな」

「少しリスクはあるかもしれないけど、みんな疲れてるだろうし、今日はこの村でゆっくりと休むもう。もしかしたらこの村で思わぬ発見もあるかもしれないし」

「俺は賛成だ。そろそろ足も限界だったところだ。っで、ネムはどうする? いや女王陛下様はどうするんだ?」

「ユーシス、それはわたくしに対しての牽制けんせいでしょうか? それとわたくしのことは今まで通りネムで構いません。女王ユリアはこの世にもう存在しませんから」

「はぁ……」


 ユーシスは大きくため息を吐いた。

 そして荒廃した村の中に姿を消した。

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