完成

 自分の意見を他者に伝えるときは、その言い方や、その言葉選びに気をつけなければいけません。たとえ、内容が正論だったとしても「ふつう」「おかしい」などの、主観的な単語(主として形容詞)が、理由としてその意見に含まれたとき、提示された側の他者がとても傷ついてしまう、というのが起きてしまうこともあるからです。

 私には他校に通っている友人がいます。幼少期から彼女は、母親から強い言葉で怒られたり注意されたりすることが多く、他者から見た事実(自分への言葉)は人一倍敏感で、それを重く受け止めてはずっと引きずってしまうような人でした。私が中学生だった頃、彼女は進路選択をするときに、彼女の親友と同じ高校に行くことにしました。その親友と一緒にいれば、家にいる時よりも安心して生活できると思ったからだそうです。


 ある日、授業でポスター作りのペアワークをすることになりました。そのペアを決めるとき、私の友人は「親友がいるから大丈夫だ」と思い、その親友に話しかけようとしました。しかし、既に彼女の知らない人間が、親友とペアを組んでいました。二人は仲がとても良く、聞いたところによると、幼馴染だそうです。そのため、昔の友人に誘われていた、という羨ましさと、親友とその人を比べた時に、こちらを選んではくれなかった悲しみや嫉妬が私の友人の中にはありました。

 あたりを見渡したとき、別のクラスメイトが近づいているということがわかりました。その子の背後から「いってらっしゃーい!」「頑張ってねー!」などと、鬼退治をするときの声援(その子が元々いた班の人たちの声)が聞こえてきたらしいです。とにかく、私の友人は「課題、一緒にやってもいい?」とそのクラスメイトから言われた為、その子とペアを組むことになりました。

 

一週間後、同じ授業でその制作が開始されました。私の友人は「発表までに授業回数が少ないから、下調べは個人でやってきて」と、ペアとなった人に言われていたが少しもやらなかった為、その人に叱られました。

「なんで下調べをしてこなかったの?作業できる時間は(今日を含めて)あと二回しかないんだよ、どうするの?(中略)急いでいる理由、まだわからないの?理解してよ。出来ないなら、もう、頭の問題だよ。」と言われてしまった為、彼女は逃げました。叱られているときに、あの母親が頭に現れてしまったからです。

 翌日、私の友人が叱られているという場にいた、その傍観者が「あの子(ペアの子)に謝って」と命令しました。私の友人は、ペアになってくれた子を、間接的に泣かせてしまったのです。泣いてしまった理由は「自分の言葉によって他者を傷つけてしまった」ということに対しての反省でした。

 「謝らないのは、普通に、人間として駄目でしょ。」

 それは、傍観者による客観的な意見でしたが、やはり、あの母親と似た言い方でしたので、私の友人は深く傷ついてしまいました。その日から、学校にはあまり行けていないそうです。


 自分が言われて嫌なことを相手には言わない、というのは皆さんも教わってきたはずです。しかし「嫌なこと」の定義も個々によって変わってくるので、前例のように、自分は言われても大丈夫だという言葉があっても、それを相手が言われたときは無理だと思われるかもしれません。

 ですから、他者に何か言いたいときには、言い方や言葉選びに気をつけなければいけないと、私は考えます。

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人権作文 笠村 葵 @kasamura3153

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