第213話 再会

 翌日から通常授業が始まった。久しぶりの授業はかなりきつい。集中力が無くなりそうだったがなんとか聞いていた。二学期からはできるだけ頑張って授業を聞くことにしたのだ。これも陽春に勉強を教えたい、という気持ちからだった。


 お昼休み、俺と陽春、達樹と笹川さんは文芸部の部室に向かった。これも久しぶりだ。


「浜辺陽春、櫻井和人、笹川理子、小林達樹、入ります!」


 フルネームを全員分言って陽春は扉を開けた。すると、そこには三上部長、雪乃先輩、そして後藤先輩が居た。


「おー、来たか。久しぶりだな」


「あんまりそういう感じしませんけどね」


 確かに夏休みも達樹たちはちょくちょく会ってたからな。


 お昼を食べて、俺たちが雑談していると、扉がノックされた。


「はい?」


「生徒会です」


 生徒会? なんだろう。


 扉が開くとそこに居たのは生徒会長の滝沢ともう一人は眼鏡の女子。ちょっときつい感じの女子だな。


「三上部長、文化祭の件でよろしいですか?」


「ああ、いいぞ」


「失礼します」


 2人は部室に入ってきたが、滝沢は笹川さんに気がついた。


「あれ? 理子? じゃなかった、笹川さん。久しぶりだね……」


「久しぶり、滝沢君」


「文芸部だったっけ?」


「ううん、陽春と一緒に来ただけ」


「そうか……えーっと、君は?」


 達樹が横でにらんでたから、気になったようだ。


「小林達樹。理子の彼氏だ」


「そ、そうか。君が……俺は滝沢俊数たきざわとしかず。よろしくな」


「うん。知ってる」


 達樹はにらんだままだ。


「こら、にらまない」


 理子が達樹を叩いた。


「イテッ……」


「じゃあ、私たちは部外者だから教室に戻ってるね」


「うん、わかった」


 陽春がそう答えて、笹川さんと達樹は出て行った。


「滝沢君、小林君は過去のことを知ってるけど、あんまり気にしてないから」


 陽春が言う。


「そうは見えなかったけどな」


「まあ、少しは気にしてるだろうけど、気にしないようにはしてるから」


「そうか……」


「で、横の子は誰なの? 彼女?」


 陽春が滝沢の隣にいる女子について聞いた。


「そんなわけないだろ」


「そうなの? 距離が近い感じしたから」


 眼鏡の女子は少し滝沢から離れて言った。


「生徒会書記の1年、川中美咲かわなかみさきです。よろしくお願いします」


 頭を下げる。ちょっときつい感じの子だな。


「あ、どうも。文芸部2年の浜辺陽春です」


 陽春が挨拶するから俺も言った方がいいか。


「同じく文芸部2年の櫻井和人です」


「櫻井……和人!?」


 川中さんが驚いた顔をした。


「えっと、何か……」


「和人君、私、美咲よ!」


「美咲って……え!?」


 美咲。写真でしか見たことがない幼馴染み。小学生になったぐらいで引っ越して俺の記憶にはもう無かった子だ。


「覚えててくれたんだ……嬉しい」


「あ、あの……美咲って和人の幼馴染みの?」


 陽春が聞く。


「はい、そうです。って、え? なんで浜辺先輩が知ってるんですか?」


「和人の家でアルバム見たから」


「家!? 浜辺先輩って和人君の……」


「彼女だよ」


「そ、そうなんですね……彼女か……」


「えーと、感動の再会の途中で悪いんだが、生徒会の打ち合わせもあるから」


「あ、すみません、会長。では……」


 2人は三上部長のそばに行って打ち合わせを始めた。

 俺は川中美咲の顔を見つめる。眼鏡もあって分からなかったが、確かに面影はある。しかし、向こうはよく覚えていたな。


「和人……」


「うん?」


「ウチが和人の彼女だからね」


 そう言って手を握ってきた。しまった、アルバムを見たときも気にしていたし、陽春を不安にさせてしまったか。


「何心配してるんだよ。美咲ちゃんと何かあるわけ無いから」


「美咲ちゃんって……」


「あ、川中さんって呼ぶよ」


「う、うん……大丈夫だよね?」


「当たり前だ。信じてくれ」


「うん」


 陽春を不安にさせないようにしないと……


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