第191話 アニメ鑑賞

 8月15日、俺はまた陽春の家に来ていた。今日は上野さんと不知火も来てアニメ「邪神ちゃんドロップキック」を見る予定だ。


 俺は午前中から来て陽春の部屋でのんびりいろいろなアニメやYouTube動画を見ていた。陽春がいろいろ見せてくるので俺は言われるがままに見ている。


「和人、『推しの子』ぐらいは見ておこうよ」


「それは見ないといけないのか」


「うん、とりあえず第一話だけ見て。90分あるけど」


「長いな」


 しかし、『推しの子』はすごく俺の興味を惹く内容だった。やはりアニメって面白いな。俺ももっと見た方がいいと思った。


 お昼になり、陽春の家族とそうめんを食べた。お兄さんの季彦さんもまだ帰省中で家に居る。陽春は季彦さんと仲がいいと言うことだが、俺の居る前ではあまり一緒に居る様子は無かった。それが気になって聞いてみる。


「俺が居ないときには陽春と一緒にアニメ見たりしてるんですか?」


「アニメは見ないけど、昨日はAIについて少し陽春に教えてみたよ。この間、和人君に教えて興味もらったからね。陽春も行けるかなと思ったんだけど……」


「どうでした?」


「途中からは寝てたよ」


 それを聞いて陽春が言う。


「だって難しいんだもん! ウチ、和人みたいに頭良くないし……」


「アハハ、でも、陽春の言うとおり。和人君は優秀だ」


「そんな……」


「そうだよ! 和人は優秀なんだから!」


 陽春が俺を自慢する。うーん、俺も成績はぱっとしないからなあ。陽春が自慢できるように頑張らないと。


◇◇◇


 午後2時頃になると上野さんと不知火がやってきた。


「すみません、遅れて。不知火には先に行ってって言ったんですけど」


「それで先に行くわけ無いから。俺は上野さんと一緒に居たいし」


「そ、そっか……」


 上野さん、少し照れてるな。


「あらあら、雫ちゃん。かわいい」


「陽春先輩、早速見ましょうか」


 最近、上野さんもかなり態度変わってきた気がする。


 俺たちはアニメ「邪神ちゃんドロップキック」を見始めた。しかし、これは相当派手な出血シーンがあるな。俺なんかは眉をひそめてしまうが、上野さんはすごく楽しんでいるようだ。まあ、ホラーというかスプラッターだな。


 あらかじめ、陽春が厳選した回を見て行く。これだけ見ればキャラがだいたい分かるそうだ。


 さらに最後には阿蘇・高森編を見た。明日、不知火達が行く場所だ。高森のいろいろな場所が出てくる。


「不知火、これ全部まわるの?」


「いや、神社は行くのが大変そうなので、高森駅と湧水トンネルだね」


「そう。神社も行きたいけど、確かに大変そうだから今度にしましょうか」


「そうだね」


 それを聞いて陽春が言う。


「和人、ウチも行きたい!」


「そうだな、今度行くか」


「うん! お姉ちゃんに車出してもらえば速いし」


「だな。その際に幸樹さんも呼べば……」


「いいね! そうしよう」


 それを聞いて上野さんが言う。


「あ、亜紀さんと幸樹さん、上手くいってるんですか」


「すこーしだけね。だんたん仲良くなってる気はしてる」


「へぇー、難しいと思ってました」


「まあ、お姉ちゃんもツンデレっぽいから。雫ちゃんと一緒で」


「私はツンデレじゃ無いですし」


「そう? でも、不知火君には素直にはなれないでしょ」


「いつも素直ですよ。ね、不知火?」


「そ、そうかな……」


「そうだよね?」


「す、素直です……」


「ね、陽春先輩」


「いや、思いっきり言わせてたから。不知火君も強く出ていいのよ。そうすればギャップに雫ちゃん、メロメロに――」


「なるわけないです。不知火、陽春先輩の言うこと聞かなくて良いからね」


「う、うん……」


「はぁ……こっちも少しずつか」


「こっちって何ですか。進んでませんから」


「はいはい」


「もう……」


 でも、俺が見る限りは陽春の言うように少しずつ進んでいるような気がする。何しろ、明日は2人で遠出するんだしな。


◇◇◇


 その後、上野さんは陽春の家に泊まるということで、そのまま残し、俺と不知火は浜辺家を出て熊本駅に向かった。


「不知火、明日は何時だ?」


「8時半に陽春先輩の家に上野さんを迎えに行きます」


「早いな。明日は勝負だ。がんばれよ」


「はい!」


「とにかくデートコースをリードして男らしさを見せるんだ。計画はしっかり立ててるか?」


「大丈夫……だと思います」


「よし。困ったら俺に頼れ。俺が家に居て何でも答えられる体勢にしておく」


「わかりました。ありがとうございます」


 明日は俺が不知火、陽春が上野さんをそれぞれサポートする予定だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る