第183話 合宿での女子部屋①
「陽春先輩、用意が良いですね」
女子全員で部屋に戻って寝る準備をした後、私、浜辺陽春はお菓子と飲み物を用意していた。
「うん、合宿の夜はガールズトークって決まってるからね」
「そう言うとは思ってましたけど、苦手なんですよね、そういうの……」
雫ちゃんは私にはそういう話もしてくれるけど、みんなで話すのは苦手そうだ。
「まあ、そう言わずに。困ったときはウチが助けるから」
「ほんとですね、お願いしますよ」
雪乃師匠、立夏ちゃん、冬美さんも円になって座った。
「陽春ちゃん、去年を思い出すわね」
雪乃師匠が言う。
「そうですね、あれは大変でした……」
「何があったの?」
冬美さんが私に聞く。
「去年は後藤先輩があの歌を歌った直後だったから、みんな雪乃先輩を心配してて……」
「そうね、そのときはもう文芸部の女子は私と大地のことは知ってて。だから、もう公開するしか無いってみんな言ったんだけど……でも、『私たち、付き合ってます』って言うのも変だし、逆に嘘っぽくなっちゃうでしょ。だから、『部誌に書いたら』って先輩が言い出して……」
「そうだったんだ」
「うん、だから、急遽予定を変更して、私はあの小説を書いたの」
「去年はその話だけで終わっちゃいましたね」
「そうね……私の話以外もいろんな恋バナ聞きたかったのに……だから今年はみんなの恋バナを聞くからね!」
「お姉ちゃん、変な気合い入れないでよ」
「時間も限られてるし、聞きたいところから聞こうかな。じゃあ、立夏ちゃん!」
雪乃師匠はまず立夏ちゃんを指名した。
「私ですか……私は相変わらずですね」
「でも最近は前より積極的に和人君に迫ってない?」
「はい、高校生活も残り半分になるって思ったら……私も思い出作りたいですし」
「でも、櫻井君は陽春ちゃん一筋でしょ?」
「はい、だから2番でいいんですけど……」
「2番とか無いから!」
「陽春ちゃんにこう言われちゃうんで、最近、あきらめぎみです」
なんか立夏ちゃんがかわいそうになってくるけど、和人のことについては譲るわけにはいかない。
「そうなんだ……じゃあ、次は雫ちゃんかな」
「え、私ですか。私は何にも無いですよ」
「不知火君は?」
「ただの友達ですし……」
「でも、二人で約束して部活に一緒に来てるでしょ」
「約束なんてしてないです。ただの偶然です」
「ふうん、陽春ちゃん、ほんと?」
「ほ、ほんとだから! ほんっとに偶然だよねえ」
「陽春ちゃん、分かりやすいよ」
「そ、そんなことないです! ウチは人狼得意だし!」
「それって、嘘言ってるって事だよね」
「あ……」
「陽春先輩……頼った私がバカでした」
「ごめん、雫ちゃん……」
「別にいいじゃない、約束してきてたって」
雪乃師匠が言う。
「そうですけど、誤解されるのが嫌で隠してただけです」
「だよね。じゃあ、一緒に食事してきてるの?」
「まあ……そうですね。2人の予定が合えば」
「もう、半分デートじゃん」
冬美さんが言った。
「デートじゃ無いですし。どうせ食事するなら一人より二人がいいってだけです」
「にしても、ほんとのところ、どうなのよ。不知火君とだいぶ仲良くなってるじゃない。それでも付き合う気ないの?」
冬美さんが聞いてくる。
「うーん、確かに友達としては仲良くなってますけど、私には付き合うつもりが無いですし。だから、ずっと友達って感じですね」
「そうなんだ」
「はい。不知火には申し訳ないですけど」
「不知火君、かわいそう」
「でも、そういうことは不知火には話してますから。不知火の方がそのうち私を見捨てる日が来るんだろうなとは思ってます」
「そんな日、来るかなあ」
私は疑問だ。
「もう近いかも知れないですね。この間、クラスのみんなで遊びに行ったんです。そしたら他の女子にデレデレしてましたし」
「そうなんだ、不知火君は一途だと思ってたんだけど……」
冬美さんが言った。
「まあ、私が相手しないから仕方ないですね」
「でも、それでいいの? 雫ちゃんは……」
私は思わず聞いてしまう。
「だって、しょうがないじゃないですか」
なんか、だんだん腹が立ってきた。
「しょうがなくないよ! 一緒に居たいなら引き留めないと!」
「ひ、引き留めるって……」
「もう……だったらウチがいろいろ作戦考えてあげるから」
「いいですからもう……私の話はこれぐらいでいいです」
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