第163話 車内での会話
俺と陽春と上野さんは再び亜紀さんの車に乗り、海水浴場を目指す。
車が出発すると陽春が俺に聞いてきた。
「和人、幸樹さんと何話してたの?」
「……ほんとに浮気したのかを聞いてたんだ」
「へぇー、で、どうだった?」
「本人は浮気じゃないって言ってたな。でも、女子と2人きりで何度か会ってたらしい」
そう言うと亜紀さんが口を出してきた。
「そうなのよ。恋愛感情はないから浮気じゃないって言って」
「でも、二人きりだよね? 事前に話してくれてたの?」
「無い無い。偶然見つけて後で問い詰めたら心配掛けたくないから話さなかったって言うんだから」
「それは無いなあ」
陽春が言う。
「だよね。それに私が偶然見かけたの以外にも絶対たくさんあると思うんだよね」
確かにそうかもしれないな。
「じゃあ、別れて正解だね」
「うん。だから、今日は最悪だよ……」
亜紀さんからしたらそうだよな。しかし、俺は協力するとの約束はしてるし、一応、話しておくか。
「でも、幸樹さんは、よりを戻したいみたいですね」
「え、そうなの?」
陽春が驚いて言う。しかし、亜紀さんは落ち着いたまま言った。
「まあ、そうでしょうね。私に未練あるのは分かってるけど」
「そうなんですか」
「私が振ったんだし。それからもちょくちょくとアプローチはあるから」
「でも、断ってるの?」
陽春が聞く。
「そりゃ、そうよ」
「そっか……ごめんね、今日こんなことになっちゃって」
陽春が亜紀さんに謝る。確かに亜紀さんからしたら最悪な形だ。
「まあ、いいよ……ほんというと私も幸樹を嫌いになったわけじゃないから」
「そうなんだ」
「うん。だから、なかなか新しい人も見つからないんだけどね。でも、また幸樹と付き合ったら同じ事になるから、もう付き合えないのは間違いないね」
「そっか……」
「だって、陽春は許せる? 和人君が隠れて女子と2人きりで会ってたら」
「無理」
陽春は即答した。亜紀さんが俺に言う。
「陽春は無理だって。和人君、気を付けてね」
「自分は大丈夫ですよ」
2人で会うような女子も居ない。……はずだ。
「今までそういうこと一度も無かった?」
「うーん……無いですね」
考えてみるが。女子と二人きりで会ったことは陽春以外無いな。
「そっか、陽春、幸せものだなあ」
「えへへ、和人で良かったあ」
陽春がそう言ってくれて嬉しくなる。
「じゃあ、雫ちゃんは?」
「私は誰とも付き合ってないのでよく分からないですね」
「不知火君が女子と二人きりで会ってたらどうする?」
「そういうこともありましたけど、別に何も思わないですよ。私と不知火は恋人同士じゃないですし」
「あれ? 中道さんが不知火君と――」
「陽春先輩、余計なことは言わなくていいですよ」
「あ、ごめん。内緒だったね」
「内緒とかじゃなくて何もないだけです」
「そっかそっか」
陽春はごまかしたようだった。
確かに中道さんという子が不知火にアプローチかけてたとき、上野さん、怒っていたような……
「でも、もし私が誰かと付き合っていて、彼氏が女子と二人きりで会ってたら当然怒りますね。亜紀さんの選択は正しいと思います」
上野さんも同意見か。
「だよね……これで幸樹がほんとに悪いやつなら簡単なんだけどな……」
亜紀さんも少しは幸樹さんを思う気持ちはあるようだが、幸樹さんの女癖をなんとかしないと、よりを戻すのは無理だろうな。
「でも、そういうことなら今日は幸樹さんが亜紀さんに迫ってくるんじゃないですか?」
上野さんが言う。
「だねえ。困るなあ……あきらめてくれたらいいんだけど。水着持ってきたけど、今日は着るのやめるか」
「え、着ないの?」
陽春が驚く。
「だって、ここで水着姿見せたら、ますます幸樹が盛り上がるでしょ。最初から水着になる予定は無かったと言うことにしておいて」
「うん、わかった」
「ごめんね、和人君。私のナイスバディを見せられなくて」
「え!?」
「ちょっと! なんで和人に大人の体を見せつけようとしてるのよ!」
「陽春はお子様だもんね」
「ウチだって少しは大人の体になってるから」
「すこーしね」
「うぅ……雫ちゃんには勝ってるから!」
「失礼ですね。変わらないと思いますよ」
「うぅぅ……そうかも」
なんか刺激が多い会話だ。
「和人君はそういうの気にするタイプ?」
亜紀さんが俺に答えにくいことを聞いてくる。
「……俺は気にしないです」
「さすが、彼氏。百点解答。でも、ほんとは?」
「お姉ちゃん!」
陽春が大声を出した。
そんなことを話していると車は今日の目的地に辿り着いた。御立岬の海水浴場だ。
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