第162話 別れた原因
俺たちが乗った亜紀さんの車は高速道路に入り、宮原サービスエリアに休憩のため立ち寄った。ここに達樹たちも立ち寄っているはずだ。
建物の中に入るとすぐに達樹と笹川さん、不知火は見つかった。俺と陽春と上野さんは同じテーブルに座る。
「和人、亜紀さんの様子はどうだ?」
達樹が聞いてくる。
「不機嫌そうだったけど、今は大丈夫だ」
「そうか。こっちも同じ感じだな」
「そうか……そういえば、別れた原因聞いたら、幸樹さんの浮気って言ってたぞ」
「はあ? そうなのか。こっちも別れた原因聞いたけど、すれ違いとか言ってたけど」
「……うーん、幸樹さんは言いづらかったのかな」
俺と達樹がそんな話をしている横では不知火が上野さんに話しかけていた。
「上野さん、車酔いとかしてない?」
「してないけど」
「そ、そうか……あのさ、帰りは同じ車だと良いね」
「なんでよ。私は陽春先輩たちの車に乗るし」
「そ、そっか……」
不知火は上野さんの冷たい言葉に黙ってしまった。すると、上野さんが言う。
「ま、海では一緒に居るんだからそれでいいでしょ」
「う、うん……そうだね」
「ナンパとかされたら守ってよね」
「もちろん!」
不知火、あっさり元気になったな。
ふと見ると幸樹さんが近くにやってきた。亜紀さんは近くに見当たらない。思い切って聞いてみるか。と思い、幸樹さんに近づく。すると、一緒にきた達樹が先に話し出していた。
「兄貴、浮気してたのか? 亜紀さんがそう言ってるってよ」
「え? ああ、なんか勘違いされてたな」
「勘違い?」
「ああ。亜紀のクリスマスプレゼントを買うために他の女子に買い物に付き合ってもらってたところを見られたんだよ」
「ああ、そういう……」
「他に恋愛相談に乗っているところを見られたりとか」
「ふーん……」
「あと、勉強分からないところを教えてたところを見られたりとか」
「いや、さすがに多すぎないか!? 全部、同じ女子と二人きりか?」
「全部違う女子だから。でも、2人きりだけどな……」
「おいおい。事前に亜紀さんに言っとかないとそりゃ怒られるだろ」
「言うと心配させるだろ。だから、黙ってたんだが、うっかり見られたことが何回かあったんだよ。でも、浮気じゃない! そういう関係じゃないから」
「そうかもしれないけど、こりゃ振られて当然だ……」
「そ、そうか……俺が間違ってたかな」
うーん、いくらそういう気持ちはないとしてもこれはさすがに……
亜紀さんの言い分が正しいか。
すると、幸樹さんは俺に小さな声で言ってきた。
「なあ、和人君。俺はまた亜紀と元に戻りたいんだけど、なんとか協力してくれないか」
「え? 俺ですか?」
「だって、妹と付き合ってるんだろ。頼むよ」
「無理ですよ。そんなに亜紀さんと親しいわけじゃないし」
「そこを何とか……」
俺に頼み込んでいる様は達樹とそっくりだな、そんなことを思ったときだった。
「妹の彼氏に何話してるのかな?」
「あ、亜紀……」
亜紀さんが近くに来ていた。
「余計なこと言ってないでしょうね」
「何も言ってないよ。ただ、別れた原因聞かれてただけだ」
「あんたの浮気が原因でしょ」
「浮気じゃなかったんだけど……」
「あんなに何回もやっておいてよく言えるわね」
「違うから。俺が好きなのは亜紀だけだし」
「でも、他の女子と一緒に居たでしょ。二人きりで。何度も何度も」
「そ、それは……悪かった。ごめん! 今も達樹に怒られてたんだ」
「……それで、はいそうですか、って許すと思う?」
亜紀さんは腕組みして幸樹さんをにらんでいる。
「い、いえ……」
「ま、あんたとは終わってせいせいしたわ。私は新しい恋を探すから。じゃあね」
「お、おい!」
亜紀さんは去って行った。
「兄貴、こりゃ無理そうだぞ」
達樹が言う。
「ですね。さすがに厳しいかと」
俺も幸樹さんに言った。
「うーん、せっかくこういうチャンスが来たんだ。今日なんとかする!」
「無理だと思うけどなあ」
達樹の言うとおりだ。
「なんとか協力してくれ。その代わり今日の海水浴場では俺が全部お金払うから」
その申し出はありがたい。バイトは始めたがまだお金は入っていなかった。
「じゃあ、女子の分もいいですか?」
「も、もちろんだ……」
「じゃあ、わかりました。といっても、たいした力にはなれないと思いますけどね」
「そうだぞ、兄貴。結局は自分で何とかしないと」
「わかってる。とりあえず、場を作ってくれるだけでいいから」
まあ、それぐらいならできるだろう。後は本人次第だ。
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