第159話 ファミレスの雫

 部活の翌日、バイト二日目は一日目よりは慣れたのか、比較的疲れずに終わることが出来た。


 また、帰りに達樹と二人で陽春達のファミレスに行く。


「いらっしゃいませ」


 笹川さんが今日は出迎えた。


「今日は雫ちゃん来てるよ」


「おー! 雫ちゃん、どこ?」


 俺たちは上野さんの席に向かった。


「あ、先輩。どうぞどうぞ」


 俺たちは上野さんと同じテーブルに座った。


「今日は一人?」


 達樹が何気なく聞いた。


「はい、誰と一緒だと思ったんですか?」


「いや、不知火だけど」


「私、不知火とセットじゃありませんので」


「そう言われるとそうだけど……」


 不穏な雰囲気になってきたので俺は違う話題を振る。


「今日は陽春を見に来たの?」


「はい、そうです。陽春先輩がバイトしてるなら是非見ておかないと」


「で、陽春の働きぶりはどうだった?」


「思ったよりちゃんとしてますね。いつもふざけているイメージしかなかったので、ちょっと見直しました」


「陽春は図書委員とかはちゃんとやってるからね」


「そうなんですね。こういう店だと陽春先輩の大きな声も役に立ちますね」


「だな」


 そんな話をしていると陽春が来た。


「和人、小林君、いらっしゃい!」


「陽春、今日も元気にやってるか?」


「うん! 雫ちゃんも来てくれたからね。張り切ってるよ!」


 元気そうで何よりだ。


「ところで明後日の海の準備はできてる?」


 陽春が去った後、達樹が上野さんに聞いた。


「はい、もう全部出来てます。明日、陽春先輩のうちに泊まりますし」


「え? そうなの?」


 俺も知らなかった。


「はい、明日部活終わりに陽春先輩の家に行って、そのまま一緒に行きます」


 じゃあ、俺が陽春の家に行けばいいだけか。不知火は達樹のお兄さんの車だな。


「ところで、小林先輩」


 上野さんが聞いた。


「ん? 何?」


「陽春先輩の友達の森さんって会ったことありますか?」


「森さん? いや、無いな」


「そうですか」


「どうしたの? 森さんのこと聞いて」


 俺は気になって上野さんに聞いた。


「いえ、不知火が森さんが可愛かったと言っていたんで小林先輩もそう思ったのかを聞こうと思って」


「……なんで俺には聞かないの?」


「櫻井先輩は言いにくいだろうと思って」


「なるほど……」


「じゃあ、櫻井先輩、言いにくいでしょうけど、可愛かったですか?」


「うーん」


 何とも言いづらいな。


「おいおい、和人、まだ美少女の知り合いが居るのかよ」


 達樹がからかってくる。


「いや、そういうのじゃないよ。森さんは美少女、というのとはちょっと違うかもな。地味なタイプだし」


「そうですか」


「なになに? 雫ちゃん、不知火が可愛いって言ってたのが気になるんだ」


 達樹がからかってきた。


「だって、私と会っているときに陽春先輩の友達が可愛かったとか言い出すんですよ」


「それはひでえな、不知火のやつ」


「ですよね。この美少女を前にしてそんなこと普通言います?」


 上野さんは自分で美少女と言った。まあ、美少女だけど。


「今度、海行くときの車内で説教しておくよ」


 達樹が言う。


「お願いしますね」


 不知火、つらい車内になりそうだな。


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