第150話 夏の予定

 木曜日、今日は夏休み前、通常授業は最後の日だ。

 昼休み、俺たちはいつものように文芸部部室に来ていた。


「陽春、和人、理子、達樹、入ります!」


 そう言って陽春は扉を開けた。相変わらず、三上部長、雪乃先輩は居たが、今日はもう一人居る。後藤先輩が座っていた。


「後藤先輩、来てたんですね。もしかして修羅場でした?」


 陽春が聞く。


「なんでだよ。俺たちはもう和解してる。なあ?」


 後藤先輩は三上部長と雪乃先輩を見て言った。


「そうだな。もう気を使わなくていいぞ」


 三上部長が陽春に言う。


「そうですか、わかりました」


「あれ? 昨日居なかった部員か?」


 後藤先輩が笹川さんと達樹を見て言った。


「いえ、理子と小林君はウチたちの友人でお昼を一緒に食べるだけです」


 陽春が説明する。


「そうか。ということは君は部員だよな」


 俺を見て後藤先輩は言った。


「あ、はい。櫻井和人さくらいかずとです」


「櫻井ね。俺は幽霊部員だったから新しい部員の名前を覚えるのが大変なんだ」


 後藤先輩は俺の名前をメモしていた。

 俺たちは席に着き、弁当を食べ始める。食べながら陽春が聞いた。


「えっと、後藤先輩は部に本格復帰ですか?」


「たまに顔を出すぐらいだけどな。でも合宿には行く予定だから他の部員も覚えないとと思って」


「そうですか」


「今日は他の部員も来るって言うからお昼を食べに来たんだ」


 後藤先輩は言った。


「そうですね、ウチら以外だと他の部員は……1年の不知火ぐらいは来るかもです」


「女子か?」


「いえ、男子です」


「なんだ」


 後藤先輩はがっかりしているようだ。


「昨日居た綺麗どころは来ないのか」


「綺麗どころって……私の妹でしょ」


 雪乃先輩が言う。


「もう一人居ただろ」


「もう一人は2年の高井立夏さんね。立夏さんは櫻井君にお熱だから無理よ」


 雪乃先輩がはっきり言った。


「なんだよ、お前の彼女か」


 後藤先輩が俺に言う。


「違います! 和人の彼女はウチですから!」


 陽春が大声で後藤先輩に言い返す。


「ん? 浜辺の彼氏だったか。ということは……どういうことだ?」


「何にしろ後藤君にはチャンスはないということよ」


 雪乃先輩が言う。


「なんだ、つまらんなあ」


「彼女作りたいだけなら部に復帰しなくていいぞ」


 三上部長が後藤先輩に言う。


「いや、彼女出来たらいいなと思っただけだ。俺が復帰する一番の目的はお前たちと前のように過ごしたいだけだからな」


「だったらいいが……」


「3年生は文化祭までだろ。もう残り時間も短いし、うだうだと昔のことにはこだわってられんから」


「まあそうだな」


 しばらくして、後藤先輩は弁当を食べ終わると片付け始めた。


「じゃあ、俺は教室に戻ってるから。浜辺、櫻井、また部活でな」


「はい!」


 陽春は大きな声で返事をした。俺は会釈しただけだ。後藤先輩は出て行った。


「……しかし、今日で笹川さん、小林君ともしばらく会えないな」


 三上部長が言う。明日で終業式だからお昼があるのは今日で1学期最後だ。


「そうですね。でも、合宿にはちょっと遊びに来ていいですか?」


 達樹が言った。


「おう、いいぞ。じゃあ、少しは会えるな。浜辺たちとは会うのか?」


 三上部長が達樹に聞く。


「はい、和人とは一緒にバイトしますし」


 俺のじいちゃん家でのバイトには達樹も参加することになっている。


「それにウチも理子とバイトするんです!」


 陽春が言った。陽春は俺がバイトしている間に理子と一緒にバイトする計画だ。


「あら? 一緒のファミレス?」


 雪乃先輩が聞く。


「はい!」


「じゃあ、ときどき大地と行くわね」


「是非来てください!」


 陽春はバイトしているところに来てもらっても何の問題も無いようだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る