第132話 期末試験

 そして期末試験が始まった。その間は毎日放課後にフードコートに行き、陽春と勉強会を行った。


 最終日。ようやく全ての試験が終わった。


「和人!」


 陽春が俺の席に来る。


「陽春、どうだった?」


「たぶん大丈夫だと思う」


「そうか。でも結果が出るのは来週末ぐらいか」


「そうだね。じゃあ、その時までお預けか」


 陽春はあのときの続きを待っている。だが、それは全ての試験で赤点が無かったときだ。


「だな」


「でも、試験が終わったご褒美が欲しい!」


「無茶言うなよ」


「だって、中間試験の時は洋菓子店スイス行ったでしょ」


 そうだった。あのときは試験が終わって達樹、笹川さん、それに立夏さん、冬美さんも一緒に洋菓子店スイスのカフェに行き、パフェを食べたんだった。


「あったなあ……じゃあ、今回もどこか行くか」


「うん! 理子たちも行くよね」


「そうね。さすがに疲れたし。バイトも無いからね」


 そんな話をしていると立夏さん、冬美さんが近づいてきた。


「私たちも中間試験の時を思い出したわ。どこかに行くなら一緒に行きましょう」


「じゃあ、陽春。どこがいい?」


「うーん……ガーデンカフェ!」


 陽春が言った。バスセンターのガーデンカフェか。俺と達樹、そして陽春と笹川さんが初めて話した場所だ。


「久しぶりだな」


「でしょ。だから行ってみたいなって」


「立夏さん、冬美さんもそれでいいか?」


「いいわよ。行きましょう」


 俺たちは6人で校舎を出た。するとそこに上野さんと不知火が居た。


「あ、陽春先輩、待ってました」


「雫ちゃん! 行こうか」


「陽春、上野さんにも連絡していたのか?」


「もちろん! 試験うまくいったの雫ちゃんのおかげだもん!」


「まあ、そうだな。じゃあ、全員で行くか」


 考えてみたらこの8人でどこかに行ったことは無かったな。俺たちはぞろぞろとバスセンターのガーデンカフェに向かった。


◇◇◇


 ガーデンカフェでピザやポテトを注文した後、机をつなげて8人分のテーブルにする。俺と陽春の横に、上野さんと不知火、その向かいに達樹と笹川さん、立夏さん、冬美さんが並んだ。


「立夏先輩と冬美先輩に学校の外で会うのは初めての気がします」


 上野さんが言う。


「確かにそうかもね」


 立夏さんが言った。


「いろいろ話したいことはあったんですけど部室では聞けないこともあったんで、こういう場は嬉しいですね」


「そう。何でも聞いていいわよ」


「じゃあ、立夏先輩ってなんで櫻井先輩のこと好きなんですか?」


 早速、上野さんがきわどい質問をする。


「雫ちゃん!」


 陽春が言うが立夏さんは何事も無かったかのように答えた。


「和人君とは一年の時からいろいろあったからね。詳しくは私の小説を楽しみにしてて」


「あ、そういうの書いてましたよね。ネタバレになっちゃいますか、すみません」


「いいのよ。結末は現実と変えてあるし」


「なるほど、楽しみです!」


「ありがと」


 立夏さん、何を書いてるんだ……


「そういう雫ちゃんは不知火のことどう思ってるの?」


 冬美さんが逆に質問した。


「私ですか? 不知火は仲がいい友達ってところですね」


 そう言われて、不知火は少し嬉しそうだ。


「ふうん、仲がいいんだ」


「それはまあ。同じ部活ですし」


「……不知火君はそれ以上の気持ちがありそうだけどね」


 冬美さんがさらに切れ込んで来るが、上野さんは冷静に答えた。


「もちろん、わかってますよ。だけど告白はしないでって言ってるんです」


「そうなんだ……」


 冬美さんが驚いて言った。俺も驚いたが陽春は冷静にピザを食べている。知っていたようだな。


「で、不知火君はそれでいいの?」


 冬美さんが不知火に聞いた。


「僕は上野さんの近くにいれればそれでいいので」


「相変わらず健気けなげねえ。報われてないのに」


 冬美さんはぽつんと言った。


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