第131話 4人でフードコート

 放課後になり、陽春が俺の席に来た。


「今日は4人で勉強会出来るんだっけ」


「だよな、達樹」


「え? ああ、そうだな」


 達樹は何か上の空と言った感じだ。まだ元カレが気になってるんだろう。


「よし! じゃあ、理子も行こう!」


「どこ行くの?」


「フードコート!」


 俺たちは4人でバスセンター地下のフードコートに向かう。考えてみたら4人でここに来たことは無かった。


 俺たちは飲み物だけを買って席に座った。


「久しぶりに来たけど、ここ、うちの生徒多いね」


 笹川さんが言う。


「ほんと多いなあ、ん?」


 達樹が周りを見回して誰かを見つけたようだ。


「どうした?」


「あれ見ろよ」


 達樹が指さす方向を見ると、そこには上野さんと不知火が居た。前回と違い、他に誰も居ない。二人きりのようだ。


「不知火、頑張ってるな」


 達樹が言う。


「だねえ。二人きりだなんて。よく雫ちゃん、オッケーしたなあ」


 陽春も言った。


「声かけなくていいのか?」


 俺は陽春に言う。


「ダメだよ。二人で居るんだから。そっとしとこう」


「そうだな」


 あの二人も次第に仲良くなっているのだろう。不知火、報われそうだな。俺は少し嬉しくなった。


「じゃあ、俺たちも始めるか」


「うん!」


 俺と陽春、達樹と笹川さんのペアになり、俺たちは勉強を始めた。期末試験は明日からだ。とにかく陽春が赤点を取らないように最低限を教えていく。だが、この間の勉強会で上野さんに教わったことが良かったらしく、陽春はかなり理解していた。


「陽春、今回は大丈夫そうだな」


「そう? よかったあ!」


 陽春が大声で喜ぶ。


「でも、油断は禁物だぞ。一教科でも赤点あれば部活禁止だからな」


「う、うん……頑張る」


 俺たちが勉強を再開してしばらくしたときだった。


「陽春先輩、ここでしたね」


「あれ? 雫ちゃん?」


 上野さんが近くに来ていた。横に不知火も居る。


「陽春先輩の大声が聞こえてきたのですぐ分かりましたよ」


「あ、しまった」


 陽春の大声で気がつかれてしまったか。


「しまったって……もしかして、私たちがここに居るの知ってました?」


「あ、うん……」


「なんで声かけないんですか。今日は不知火と二人だけだったのに」


「二人だけだからだよ。邪魔しちゃ悪いと思って」


「私と不知火はそういうのじゃないですから。ね?」


 上野さんが不知火に言う。


「う、うん……」


 それを見て達樹が言った。


「不知火、ちゃんと言わないとダメだぞ」


「は、はい! 上野さんはそういうのじゃないっていうけど俺は……」


「そういうのじゃないのよね?」


 上野さんが不知火をじろっと見た。


「そ、そういうのじゃないです」


 結局言わされたか。

 それを見て達樹がため息をついた。


「でも、珍しいね。二人でこんなところで勉強会って」


 陽春が言う。


「まあ、私もこの間は悪かったですし。罪滅ぼしってところです」


「そ、そうだったんだ」


 不知火は驚いたように言った。


「ん? 不知火の認識は違ったのか?」


 達樹がおもしろがって聞く。


「はい、放課後に中道さんに勉強会に誘われたんですけど、急に上野さんが『今日は私たちとするから』って言ってきたので、先輩達とやるのかと思ってついてきました」


「ふーん……」


 そう言って、陽春がニヤニヤとした顔で上野さんを見た。上野さんは珍しく赤くなっている。


「し、不知火が困ってるようだったから助けてあげただけよ。別に中道さんと勉強会したって私はいいんだからね!」


「あ、うん……ありがとう」


「はぁ……今日はもう疲れたんで帰ります」


 上野さんは言った。


「うん! じゃあね!」


 上野さんは帰っていった。


「し、失礼します!」


 不知火も慌てて付いていった。


「不知火、もう少しだな」


 達樹が言う。


「そう? まだまだだと思うけど」


 笹川さんの評価はまだ厳しいようだ。


「そうかあ? 浜辺さんはどう思う?」


「うーん、ウチも理子と同じかな。あんまり前と変わってないよ」


「そうなんだ……」


 俺は少し驚いて言った。

 まだまだ女子の心は俺には分からないようだ。


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