第130話 理子の元カレ

 翌日、笹川さんと達樹が教室に入ってくると俺はついじっと見てしまった。昨日、笹川さんの元カレと会ったからだ。俺の様子がおかしいことに達樹が気づいた。


「和人、どうかしたか?」


「いや……なんでもない」


「怪しいな。何か隠してるか?」


「別にたいしたことじゃ無いよ」


「そうか……おーい、浜辺さん!」


 達樹が陽春を呼んだ。陽春が席からやってくる。


「え、何?」


「和人が俺に何か隠しているようなんだけど分かる?」


 陽春に聞くとは卑怯だな。


「え? あー、昨日のことか」


 陽春はすぐに言った。


「昨日のことって?」


「図書室で偶然、理子の元カレと会っちゃって」


「陽春、櫻井に教えちゃったの?」


 笹川さんが陽春に聞く。


「だって、話しかけられたから。それに会話の内容で気づかれちゃったし」


「そっか……まあ、いいわ。櫻井、達樹には何も言わなくていいからね」


「う、うん」


「ま、まあ、俺も気にはしていないからな」


 達樹は動揺を隠すように言った。


 休み時間、達樹からメッセージが来た。


達樹『どういうやつだった?』


 元カレか。


和人『何も言うなって言われたから言えないだろ』


達樹『だよな、すまん』


和人『やっぱり気になるのか?』


達樹『もしお前なら気になるだろ』


 確かに。元カレでは無いが、前に陽春と仲良くしていた佐藤というやつは気になったしな。


和人『でも気にするな。別に影響は無いと思うぞ』


達樹『そうか。じゃあ気にしないことにする』


 そのメッセージが来た直後に、達樹は俺を見て頷いた。


 それを後ろから見ていた笹川さんが達樹のところに来る。


「達樹、何してたの?」


「あ、いや、ちょっと……」


「スマホ見せて」


 こ、恐い……


「……」


「見せられないんだ」


「分かったよ」


 達樹は俺とのやりとりを見せたようだ。


「ふーん、そんなに気になるなら教えてもいいわよ」


「別にいいよ」


「いいの?」


「だからいいって。楓と違って問題起こすようなやつじゃ無いんだろ」


「まあ、そうね。私はちゃんと人を見る目はあるから」


「そうか……じゃあいいよ」


 いつの間にか陽春も近くに来ていた。心配そうな顔をしている。


「あ、陽春。大丈夫よ、心配しないで」


 笹川さんが言った。


「ならいいけど。ごめんね。ウチが滝沢君と話しちゃったせいで」


「偶然会ったんでしょ。仕方ないよ」


「うん……小林君も気にしないでね」


「わ、わかった……」


 陽春は席に帰っていった。


 しかし、笹川さんも気がついてなかったが、陽春、滝沢君って言っちゃってたな。

 小林も気づいていないふりをしていたが絶対気がついていた。


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