第123話 フードコートでの発見

 達樹が楓さんと会ったことで笹川さんが怒っていてちょっと心配だったが、放課後には仲良く達樹と二人で帰っていったから大丈夫だろう。


「俺たちも帰るか」


「うん、ちょっとなんか食べよう!」


 陽春が言う。


「陽春、勉強しなくていいのか」


「うーん、明日からね」


「明日から絶対だぞ」


「うん! だから今日は何か食べようよ」


「はぁ、わかったよ」


「やった! 放課後デート!」


 陽春が大声で言うので、クラスメイトから見られてしまう。立夏さんもにらんでるな。


「あ、立夏さん、冬美さんも行く?」


 陽春がそれを見て聞いた。


「陽春ちゃんたちのデートは邪魔したくないから。それに私たちもカラオケ行くからね」


 立夏さん、冬美さん、それに何人かの男女で行くようだ。

 トップカーストの奴らも部活が休みで浮かれているようだな。


「そっか、じゃあ、また明日ね!」


 陽春はそう言うと俺の腕を取って歩き出した。


「今更見せつけなくてもいいんじゃないか?」


「見せつけてるんじゃなくてウチがこうしたいだけだよ」


 陽春はそう言って腕を放さなかった。



 俺たちがやってきたのはバスセンター地下のフードコートだ。中間試験の時もここに勉強しに来ていた。高校生のたまり場的場所だな。

 俺たちはシュークリームと飲み物を買って席に座る。すると、陽春が誰かを見つけたようだ。


「陽春、どうした?」


「和人、ちょっとあれ見て」


 陽春は隠れるようにして、ある方向を指さした。そこにはうちの生徒が4人居た。ノートを広げているので勉強会のようだ。あれは・・・・・・上野さんと不知火だな。向かい合って座っている。


「上野さんと不知火か。あいつら、うまくやっているようだな」


「何言ってるのよ。良く見て」


「え?」


 良く見ると、上野さんの横には男子が、不知火の横には女子が居る。そして、それぞれ教えあっているようだ。


「あら? 違うパートナーか」


「そうみたいね。どうなってるんだろ……」


 陽春は気になっているようだ。


「聞いてみたらどうだ?」


「そ、そうだね。メッセージ送ろう」


 陽春は俺にも画面が見えるようにスマホをテーブルに置き、上野さんにメッセージを送った。


陽春『横に居るのは誰かな?』


 上野さんがメッセージに気がついたようだ。スマホを取り出し、操作している。するとメッセージが来た。


雫『近くに居るんですか?』


陽春『和人と一緒だよ』


 上野さんはきょろきょろと見渡し、俺たちを見つけた。だが、すぐに目をそらしスマホを操作した。


雫『今はクラスメイトと居るんで話しかけないでください』


陽春『わかった。お邪魔だったねえ』


雫『そういうのじゃないですからね』


陽春『うんうん、頑張って』


雫『なんかむかつきますね。明日説明しますので。じゃあまた』


 上野さんはスマホをしまった。これ以上は無理か。


「もしかしたら男子の方は不知火君が言っていた下田君かな。学年1位の」


 そういえばそういうことを言っていた。学年1位が下田で上野さんは2位だったな。そして、最近はやたら近づいているらしいし。確かに優男でイケメンという感じか。


「女子の方はわからないね。クラスメイトかな」


 黒髪ロングの真面目そうな少女だ。

 不知火に距離が近い感じで絡んでいるな。


「まあ、不知火君もイケメンと言えばイケメンだからねえ。モテてもおかしくないよ」


「あいつの欠点は上野さんを追い回してることぐらいだからな」


「でも不知火君、雫ちゃんを見つめちゃってるよ」


「不知火、かなり不満そうだな」


「横の女の子かわいそう」


「陽春、そっちの味方!?」


「ウチは女子の味方になっちゃうから。不知火君のこと好きそうな子だもん」


「でも、不知火は上野さん一筋だからなあ」


「だよねえ」


 俺たちは4人を見るのをやめて、シュークリームを食べ始めた。


「まあ、明日、上野さんが話してくれるって言うからそれを聞くか」


「そうだね。でも、ウチは和人と付き合えて良かったなあ。雫ちゃんと不知火君見てると大変そうだもん」


「そうだな……」


「だから、手をつないで帰ろう」


「……そうだな」


 いつもは恥ずかしいところだが、今日は手をつないでバスセンターを歩いて帰った。


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