第120話 昼休み
翌日、水曜の昼休み。部活は休止に入ったが、俺たちは文芸部の部室に来ていた。部活動禁止で放課後は部室は開けられないが、昼休みは大丈夫だ。
「浜辺陽春とその彼氏、笹川理子とその彼氏、入ります！」
陽春が大声で言って俺たちが入ると、三上部長と雪乃先輩が居た。
「やあ、来たね」
「はい。部活動禁止でもこうやって先輩達と会えるのはいいですね」
「そうだな、そう言ってもらえると俺たちも嬉しいよ」
昼飯を食べて、しばらくすると、今度は不知火がやってきた。
「おう、不知火、どうした」
達樹が聞く。
「はぁ……教室に居づらくなって逃げてきました」
「どうしたんだ？」
「うちのクラスに
「え、雫ちゃんって学年２位なの！？」
陽春が驚いて言う。
「はい。今はそうですね。で、その下田が最近、やたらと上野さんに近づいてて、一緒に勉強教えあったりするもんだから、周りもお似合いだ、みたいに言い出してて……」
「そうなんだ。その下田君って、かっこいいの？」
「まあ、どうですかね。周りは格好いいって言ってますけど……」
不知火は不服そうに言った。
「で、雫ちゃんはどういう反応なの？」
陽春が聞く。
「上野さんは他の人への対応と大して変わらないような感じだと僕は思うんですけどね。絶対に僕の方が上野さんと仲いいです！」
「でも、お前、逃げてきたのか」
達樹が言った。
「だって……また二人で勉強教えあいだしてて……それ見て耐えられなくなってしまいました」
「バカだなあ。そこに入っていけよ。じゃないと、ほんとに取られちゃうぞ」
「そ、そうですよね……俺、行ってきます！」
「おう、行け行け」
不知火は部室を出て行った。
「人気者だからなあ、上野さんは。不知火も頑張らないと……」
達樹がそう言った。
「でも、そんなに上野さん、頭良かったんだ。なのに、中間試験の時、うちらの勉強会に来てたよね」
そう陽春が言う。そういえば、陽春は１年の上野さんに勉強教わってたよな。
「勉強会か･･････今回もやるのか？」
達樹が聞いた。
「今回もやらないとまずいよ。理子、お願い！」
陽春が笹川さんに言った。
「うん、試験前だから日曜はバイト入れてないし、また陽春の家でやろうか」
「うん！ 和人も来るよね」
「もちろん」
「俺も行く！」
達樹が言った。
「じゃあ、今回は４人かな」
「また、雫ちゃんも呼ぼうぜ。それに今度は不知火も」
達樹が言う。達樹はなぜか不知火の恋を応援している。部活をやっておらず、後輩が居ない達樹は先輩風を吹かせたいだけかもしれないが。
「うーん、そうだね。聞いてみようか」
陽春がスマホを操作してメッセージを送ったようだ。すると、すぐに返事が来た。
「雫ちゃん、もちろん行くって。不知火君が来てもいいってよ」
やっぱり上野さんは陽春を慕ってるな。
「そうか、だったら今度は６人だな」
「うん、６人かあ……人狼ゲームとか出来そうだなあ」
陽春は人数が増えたことでどういう遊びができるかを考えているようだ。
「陽春、遊ぶんじゃないんだぞ」
「わかってるよ、息抜きだよ息抜き」
「息抜きで本格的にゲームしなくていいから」
「６人での人狼は本格的じゃないし」
「そういう意味じゃないから」
「じゃあ、もう少し増やせば……」
「人狼メインで人数増やすこと考えてどうする」
「でも、部屋の広さ的にはもう増やせないか。仕方ない。人狼６人プレイで」
「しないから」
笹川さんが言う。
「えー！」
「……陽春ちゃん、赤点取ったら……分かってるわね」
雪乃さんが口を出した。
「は、はい！ ……勉強頑張るか」
陽春は人狼をあきらめたようだ。
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