第118話 部活追い込み
火曜日の放課後になった。今日でしばらく部活は休止になる。
「陽春、和人、立夏、冬美、入ります!」
元気に陽春が言って部室に入ると今日も部長達が先に居た。
「みんな来たな。今日で部活もしばらく休みだ」
「そうですね」
「今日は最後に進捗報告をするからな。そこまで成果を出すように」
「はい!」
陽春だけが大きな声で返事をした。それ以外の三人は頷いただけだ。
「雪乃さん、だいぶ修正しましたので小説見てもらえますか?」
「いいわよ」
立夏さんは今日も雪乃さんに小説を見てもらっていた。何回も見てもらっているし、かなり進んでいるのかな。
「うーん、この雨の日の表現、もうちょっと工夫した方がいいわね。直接的すぎるわ」
「はい」
具体的な修正ポイントを言ってるな。
「それに、この傘を貸してくれる子の見た目をもう少し、詳細に書いた方がいいわね」
「はい」
「あと、クッキーを作るシーンも書いた方がいいんじゃないかしら」
「そうですね……」
立夏さん、何の小説を書いてるんだ……まさか、俺との話じゃないよな。
思わず立夏さんを見てしまう。すると、立夏さんはそれに気づいたのか、俺を見てきた。
「うーん、髪は短め、少し地味な感じだけど知的さを感じる、みたいな感じかしら……」
俺を見ながら立夏さんはキーボードを打っている。
「あの……立夏さん?」
「え、何?」
「俺のこと書いてなかった?」
「あ、気にしないで」
「すごく気になるんだけど……」
「……」
立夏さんは無言でキーボードを打ち始めた。
「和人、また他の女子見てるし……」
陽春が俺を見て言ってくる。
「あ、ごめん。俺も集中しなきゃ」
そう言って、自分の作業を始めた。
そこに、後輩たちがやってきた。
「上野雫、不知火洋介、入ります」
上野さんと不知火が自分たちの席に着いた。
「雪乃先輩、私のも見てもらえますか?」
「うん、いいわよ」
上野さんが自分のタブレットを雪乃先輩に見せている。
「えっと……何でも書いていいって言ったけど、さすがに過激なような……」
雪乃先輩が上野さんに言う。
「そうですか?」
「生首の表現はちょっと抑えた方がいいかもね」
「気にいってたんですけど……グロいですかね」
「ちょっとね。あと、チェーンソー、学校にあるかなあ」
「うーん、林業を教える高校とかなら」
上野さん、そういえばホラーを書くとか言ってたか。
一方、不知火は陽春のところに来ていた。
「浜辺先輩、『氷菓』のアニメなんですけど、どうやったら見れますかね」
「あ、小説、難しかった?」
「いえ、すごく面白くて『氷菓』は読んでしまったんですけど、どうアニメ化されてるのか気になって……」
「そっか。そうだねえ、サブスクの無料で一ヶ月とかあるところに入ったら? 私はアニメ専門のところに入ってるけど」
「なるほど、僕もそこに入ってみます!」
「うん、うん。後でおすすめの作品も送っとく」
「ありがとうございます!」
俺は気になって聞いてみた。
「不知火、お前、書評は『氷菓』にするのか?」
「そうですね。今のところ『氷菓』の予定です。面白かったので」
俺が勧めた本じゃなかったのが少し残念だ。それに俺は『氷菓』は読んでないしな。
「どういうことを書きたいかをまずはおおまかにまとめてみろよ」
「はい!」
不知火はノートに何か書き始めた。
「私が勧めた本に決めてもらってうれしいわね。これで不知火君もミステリー派ね」
雪乃先輩が言う。
「いや、まだまだこれからだろ。ラノベ以外のSFは読ませてないからな。SF派にしてみせる」
三上部長が言いかえした。
「でも、もう私たちが部活出来る時間も少ないわよ」
「だけど、夏休みに合宿もあるからな。これからも時間はある」
「じゃあ、私、たくさんミステリー持ってこようっと」
「おれも初心者向けSF持ってくるから」
「大地のSFは難しいのばっかりでしょ」
「おい、大地になってるぞ、部室では部長だろ」
「あ、ごめん、部長……」
このイチャチャももう少しで聞けなくなると思うと、寂しくなるな。
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