第116話 買い物

 日曜日、俺は駅ビルに来ていた。今日は陽春と一緒に上野さんへの誕生日プレゼントを買う予定だ。


「お待たせ!」


 陽春がやってきた。陽春はTシャツにショートパンツだ。生足がまぶしい。俺は思わず見とれてしまった。


「やあ、暑いね! 暑いから真夏モードで来ちゃった」


 陽春が言った。


「あれ? 和人どうしたの?」


「い、いやあ、なんでもない……」


「ん? 足見てた?」


「いやあ、その……」


「彼女なんだからじっくり見ていいんだよ。ほれほれ」


 陽春が俺に足を見せようとしてくる。


「やめろよ、もう。みんな見てるぞ」


「あ、それもそうだね。こういうのはまた家でね。じゃあ、行こう!」


 俺たちは駅ビルに入った。


「何買おうか?」


 俺たちはまずはハンズに行ってみた。ここで何か見つかればと思ったがなかなかいい物が見つからない。


「あ、これとかは?」


 陽春が見ていたのはボードゲームのコーナーだ。俳句を作るゲームを見ている。


「陽春がやりただけだろ」


「うん、そうだけど」


「そういうのは自分で買おうな」


「それもそうか」


 結局、ここでは決められなかった。


「うーん、どうしよう……そうだ! またクレーンゲームで何か取るというのは?」


「クレーンゲームか。とりあえず見に行ってみるか」


 俺たちはクレーンゲームのコーナーに行く。


「あ、クロミちゃんあった!」


 陽春がクロミちゃんのぬいぐるみを見つけた。上野さんが好きなキャラクターだ。だが、これは相当大きなサイズ。取れるのだろうか。


「陽春、これ取れるのか?」


「何回かやれば何とかなると思うけど……」


「だったら、お金は俺が払って陽春が取ることにするか。2人からのプレゼントだ」


「うん!」


 まずは6回分を入れて陽春がチャレンジする。さすがの陽春も苦戦していたがギリギリ6回目で取れた。


「よし!」


「よかったー。これで一安心だね」


「じゃあ、これをプレゼントにするということで。あとは何か食べていくか」


 俺たちは下の階に降りた。すると、エスカレーターから不知火の姿が下に見えた。


「陽春、不知火が居るよ」


「ほんとだ、行ってみよう!」


 俺たちは不知火に声を掛けた。


「おーい、不知火!」


「あ、先輩方。ちょうどよかったです。これどう思います?」


 不知火が見ていたのは高そうなペンダントだ。


「お前、雫ちゃんにそれを贈ろうとしているのか?」


「はい」


「さすがに引くかも……」


 陽春が言う。


「え、そうですか? 良くないですか?」


「だって、不知火君と雫ちゃんは付き合ってもいないんだよ。それなのに急に高い物プレゼントされたら雫ちゃんも困るよ」


「そ、そうですか……」


 不知火は落胆していた。


「でも、他に何も思い浮かばなくて……何がいいと思います? 陽春先輩なら何がいいですか?」


「ウチ? うーん、そうだな。美味しいものかな」


「美味しいもの……」


「そうだ! 月曜日って部活あるでしょ。不知火君が誕生日ケーキを買ってくるってのはどうかな」


「誕生日ケーキですか……」


「うん。学校のそばにケーキ屋あるから予約して放課後取りに行って。で、部室でお祝いするの!」


「なるほど……いいかもしれませんね」


「絶対それがいいって。じゃあ、早速予約に行こう!」


「そ、そうですね」


 陽春は不知火と盛り上がってケーキを予約しに行くことになった。


 まあ、いいけど、部室で食べるってことは陽春も食べるってことだよな。自分が食べたいだけのような気もする。

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