第102話 学年のアイドル
放課後、俺の席に陽春が来て、達樹とともに上野さん達がくるのを待った。笹川さんはバイトなので一足先に先にファミレスに向かっている。
俺たちがだらだらと3人で話してると、ざわめきが聞こえてきた。
「お、おい……すごい可愛い子入って来たぞ」
「1年生?」
「噂で聞いたことある子だ……」
うーん、なんかかえって注目集めているような。
「先輩、来ましたよ」
上野さんが言う。もちろん不知火も一緒だ。
「雫ちゃん!」
陽春がすぐに上野さんを抱きしめる。
「抱きしめなくていいですから。暑いですし。それにしても、ここが先輩達の教室ですか……」
上野さんが教室を見回す。まだ教室に残っている生徒はみんな俺たちを注目していた。
「立夏先輩と冬美先輩は居ないようですね」
「もう帰ったんじゃないかな」
そこに委員長の山崎奈美が来た。
「陽春ちゃん、その子たち、後輩?」
「そうだよ、文芸部の上野雫ちゃんと不知火君」
「あ、どうも。上野です」
「山崎です。やっぱり上野さんか」
「え、私のこと知ってるんですか?」
「うん、一年生に可愛い子が居るって噂になってるよ。それに私、演劇部に友達居るし」
「あー、演劇部ですか……」
演劇部?
「雫ちゃんは今、文芸部なんだね。陽春ちゃんと仲いいの?」
「はい、陽春先輩にはすごくお世話になってます」
「へぇ、陽春ちゃん先輩してるんだ」
「そうだよ! 先輩だから」
陽春が偉そうに胸を張る。
「いつも、いじられてるけどな」
「言わないでいいから!」
俺の突っ込みに陽春が大声を出した。
「陽春先輩が騒ぎ出したし、そろそろ行きますか」
上野さんが言った。
「そうだな、よし、行こう!」
達樹が言い出し、俺たちは5人で教室を出た。
校舎を出たぐらいで俺は上野さんに聞いてみた。
「上野さん、山崎さんが演劇部って言ってたけど何かあったの?」
「ああ、その話ですか……私、文芸部に入る前にいろいろな部に体験入部してたって言ったじゃないですか」
「そうだったね」
「演劇部にも居たんですけど、そこでいろいろあって……」
上野さんは言葉を濁した。
「何か大変だったんだね」
「はい、居づらくなって辞めちゃいました」
そういえば、ダブルデートの時、言ってたな。冗談っぽく言ってたが、結構大変だったんだろう。
「あれは上野さんは何も悪くないよ」
不知火が突然言い出す。
「何? 知ってるの?」
上野さんが不知火に聞いた。
「演劇部のやつから聞いたんだよね」
「そっか……」
「何があったんだ?」
俺は不知火に聞いた。
「上野さんがヒロイン役に抜擢されて、それまで内定してた女子とかにねたまれたみたいです」
「なるほど……」
「まあ、私が可愛いのが悪いんですけどね」
上野さんが茶化したように言った。
「雫ちゃん!」
また、陽春が上野さんを抱きしめる。
「いや、暑いですから。それに、今は文芸部で居心地いいですし、演劇部辞めて良かったって思ってます」
「そうか……」
「なんだかんだで、今、楽しいですし」
上野さんはにっこりと笑った。なるほど、確かにこれは学年のアイドルだ。
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