第93話 進行状況
月曜の朝。教室にまた大きい声が響いた。
「おっはようございまーす!」
陽春が俺の席まで来る。
「おはよう、ウチの彼氏!」
「お、おはよう……俺の彼女」
俺は陽春とハグしたことを思い出し、ちょっと照れてしまい顔をそらした。
「あれー? 和人どうしたのかなあ?」
そんな俺の顔を陽春が覗いてくる。
「昨日のこと、思い出しちゃった?」
「い、言うなよ」
「ふふっ。かわいい」
「え、何かあった?」
それを見て達樹が聞いてきた。
「あー、昨日……」
「おい、陽春」
何でも言ってしまいそうになる陽春を慌てて止める。
「言わないから。昨日、雫ちゃん達とダブルデートしたって言おうとしただけ」
「えー! ダブルデート! するなら俺たちが先でしょ」
達樹が言う。確かに笹川さんと付き合いだしたばかりだもんな。
「だって、先に約束してたから」
「じゃあ、次の日曜!」
そこに笹川さんがやってきた。
「日曜はバイト入ってるから」
「えー!! 空いてる日ないの?」
「水曜は空いてるよ」
「じゃあ、放課後ダブルデートで」
「よし、そうしよう!」
達樹と陽春が勝手に決めた。まあ、いいか。
「ところで、櫻井。陽春から聞いてるからね」
「え!?」
笹川さんの言葉に焦る。陽春は笹川さんには何でも話してるし、ハグしたことも話したのか。
「櫻井、それぐらいはいいんだけどさ。あんまり進みすぎると……」
「わかってるから」
思わず言い返してしまう。
「なら、よろしい」
そう言って笹川さんは自分の席に座った。
俺がヘタレすぎて全然進んでないのに、こういうこと言われるとなあ。なんか腹が立ったので、後で達樹にどこまで進んだか聞いてみよう。俺たちより進んでたら言い返してやる。
◇◇◇
休み時間。笹川さんが席を立ったすきに、俺は達樹に小声で聞いてみた。
「なあ、お前達ってどこまで進んでるの?」
「え、どこまでって?」
「とぼけるなよ。やることやってるのかってこと」
俺は聞いてみた。
「まだ付き合いだしたばかりだぞ。手つないだぐらいだ」
「そ、そうか……」
「お前達とは違うんだよ。これからだからな」
「それもそうだな」
「そういうお前はどうなんだ? 結局キスはしたのか?」
「……いや、まだだ」
「なんだよ、持ち越してんだろ。浜辺さん、いつでもオーケーじゃないの?」
「そうだけど……俺の勇気が……」
「まあ、和人らしいか」
何か腹が立つ。言い返したくなった。
「でも、ハグはしたからな」
「え、そうなんだ……すました顔して、やることやってるなあ」
そう言われるのも腹が立つな。
「でも、浜辺さん。続きを待ってるぞ、早くしてやれ」
「そ、そうだよなあ……」
俺は結局ヘタレだった。
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