第70話 昼休みの部室
水曜日の昼休み、今日は日差しが強い。俺たちは部室に向かった。
「浜辺陽春とその彼氏! あと部外者2名、入ります!」
陽春はそう言ってドアを開けた。確かに達樹と笹川さんは部外者だが。
「いらっしゃい」
そこにはやはり三上先輩と雪乃先輩が居た。
「いらっしゃいました!」
「あらあら、陽春ちゃんは今日も元気ね」
「はい!」
笹川さんと達樹が仲直りしたのが嬉しいのか、今日の陽春はいつもより元気な気がする。
しばらくすると、そこに上野さんと不知火が来た。
「あ、陽春先輩たち、今日は居ましたね」
「うん!」
「何か用でもあった?」
笹川さんが聞く。昼休みは最近屋上に居たけど、昨日部活で会ったし、用があるわけでは無さそうだが。
「いえ、昼休み、陽春先輩で楽しもうかと」
「なんでよ!」
陽春が大声を出す。
「だって、陽春先輩、面白いですもん」
「そ、そうかなあ」
陽春が頭をかく。褒められたと思っているようだ。
「あんまり陽春をからかわないでよ。でも、不知火君も一緒に来たんだ。2人付き合いだした?」
笹川さんが聞く。
「そんなわけないです。勝手に付いてくるから」
「お、俺も文芸部員だし……」
「不知火、あんまりつきまとうと逆効果だぞ」
俺は勉強会で上野さんが不知火をしつこいと言っていたのを思い出して言った。
「そ、そうですね……ごめん、上野さん」
「まあ、いいけど。誤解されるようなことはやめてよ」
「う、うん。わかった」
不知火は下を向いて黙った。
「喧嘩するほど仲がいいとも言うけど」
「違いますから。私は櫻井先輩のような知的な人が好きなんで」
上野さんが俺に近づく。
「ちょっと! 人の彼氏に何言ってるのよ」
陽春が怒った。
「いいじゃないですか、別に陽春先輩から獲ろうとは思ってないですし。単に好きなタイプってだけです」
「和人、お前、モテモテだな」
達樹が俺に言う。
「上野さんは陽春をからかっているだけだよ。知的なタイプなら三上先輩だろ」
「俺か?」
三上先輩がこっちを向いた。
「あー、三上先輩は雪乃先輩が居るのでちょっと恐いです」
「あら、そう。いい心がけね」
雪乃先輩が言った。
「なんでよ、ウチならいいってわけ?」
陽春が上野さんに言う。
「陽春先輩は、心の広い優しい人だと思ってますので」
「そ、そうかなあ」
陽春が笑顔で頭をかく。だめだ、こりゃ。完全に遊ばれてる。少し助けるか。
「知的なやつなら一年生にも居るだろ。そういうやつと仲良くならないのか?」
「あー、一年生は子どもっぽくて無理ですね」
それを聞いてさらに不知火が落ち込んでいる。
「じゃあ、俺は!」
達樹が手を挙げる。笹川さん隣に居るのによく言うな。
「小林先輩は全然知的じゃ無いですけど」
「グサっ!」
「笹川先輩とも似合ってないですよ」
「そ、それは言わないでー!」
なるほど、達樹は自分のプライドを捨てて陽春がからかわれているのから守ってくれたのか。あとで礼を言っておこう。
「そういえば私、平川先輩って人に話しかけられたんですよね」
「え!?」
達樹が驚く。
「協力できないかとか言われて。なんか恐いから断ったんですけど」
「あの子……何やってるの」
笹川さんがつぶやいた。
「断って正解だと思うぞ。きっとよからぬ事だろうし」
「そうですか、櫻井先輩がそう言うなら今後も断りますね」
上野さんは俺に笑顔で答えた。
◇◇◇
上野さんと不知火が教室に戻った後、笹川さんが言う。
「雫ちゃん、何気ない感じで言ったけど、たぶん楓のことを伝えたくて来たんだと思う」
「え、そうなの?」
陽春が驚く。
「俺もそう思った。わざわざそれのために来たと思わせないようにしたんだろうな」
「うん。雫ちゃんは私たちの味方なんだと思う」
「そうなんだ。まあ、いい子だとは私も思ってたし」
陽春が言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます