第62話 冬美の真実

「じゃあ、冬美さんはどうして文芸部に入ったの?」


 笹川さんが今度は冬美さんに聞いた。


「私は自分の責任を取っただけよ。元はと言えば全て私の責任」


「え、何が?」


 笹川さんは訳が分からず聞く。


「小林君と和人君が私たちに声を掛けてきたとき、私が独断で断ったのよ。でも、立夏は和人君と一緒に遊びたかったみたいね。だから後で文句言われて……。で、気がついたらあんたたちと一緒になってたから」


「え? 達樹と櫻井が声を掛けた?」


 笹川さんが驚く。そうか、あの話は陽春にしかしてなかったし、笹川さんには内緒にするように達樹が頼んだのだった。


「私たちに声掛ける前に、この2人に声掛けてたんだって」


 陽春が笹川さんに言った。


「そうなの!?」


 笹川さんが達樹に聞く。


「ご、ごめん。先に2人を見かけたからさ。でも、断られたんだ」


「だから私たちに声掛けたのか。何かおかしいと思ったら」


「ち、違うって。その前に俺は理子が好みのタイプだって言ってたから。なあ、和人」


「う、うん。それはホントダヨ」


 笹川さんの迫力で俺はちょっと片言になってしまう。


「でも、2人がオッケーだったら2人と遊びに行くつもりだったんでしょ」


「そ、それは……そうだけど」


「ひどいなあ、楓の代わりかと思ったら2トップの代わりだったのか」


「ち、ちが……わないこともないけど」


「あーもう、付きあおうかと思ってたけど、やめた」


「り、理子!」


「まあまあ、私たちは小林君には興味無いから許してあげて」


 冬美さんがまあまあひどいことをいう。


「はぁ。ほんっとにどうしようもないわね」


「ご、ごめん!」


 達樹が頭を下げる。


「俺からもごめん。でも、ほんとに達樹は笹川さんのことタイプだって言ってたし。2トップには一度だけでもチャレンジしたいって言ってたから興味本位だと思う」


「それもひどいわね」


 冬美さんが言う。


「2人にも謝って」


 笹川さんが達樹に言う。


「高井さん、長崎さん、あのときはすみませんでした!」


 達樹は2トップに頭を下げた。


「私たちはいいって。逆に後悔してるし。断ってごめんね」


「そう言ってもらえると……。イタッ!」


 冬美さんの言葉に達樹が照れたところで、笹川さんがたつきの頭を叩いた。


 でも、あのとき2トップと遊んでいたらどうなったんだろうか。俺は陽春と仲良くなれたんだろうか。そう考えると断ってもらって良かったと思う。


「ま、でも、私もお姉ちゃんにずっと文芸部誘われてたの断ってたから。もうすぐ部活動も終わりだし、少しはお姉ちゃん孝行しておこうかというのもあったけどね」


 冬美さんは言う。


「そうなんだ」


「うん。私もお姉ちゃんや三上部長にいろいろお世話になってるしね。それに文芸部の活動は思ったより楽しいから」


「冬美さんも本が好きなんだね」


「まあね。いろいろ読んでるわよ」


 そこからは冬美さんや立夏さんの読んでいる本の話になった。その間、笹川さんと達樹は黙ったままだった。二人の仲が大丈夫ならいいが……。

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