第61話 立夏の真実

「和人、大変だな、がんばれよ」


 達樹がそう言ってきた。


「おう! お前もな」


 俺は言い返す。


「俺は、まあいいだろ」


 達樹はそう言い換えしてきた。


 そこにパフェが来てみんなで食べ始める。そのおいしさの感想を言い合ったところで立夏さんが笹川さんに話しかけた。


「そういえば、あなたたちも付き合ってるんだよね?」


「付き合ってないから」


 笹川さんが即答した。


「あれ? そうなの?」


 冬美さんも言う。


「うん、ほんとに付き合ってないけど」


 笹川さんが言い返す。


「そうなんだ。てっきり付き合ってるって思ってた。いつも一緒に居るし」


 冬美さんが言う。


「いつもなんて居ないから」


「だって、お昼とか帰り道とか」


「お、お昼は見られてないはずだけど」


「だって、陽春ちゃんと一緒に出て行くでしょ。で、小林君は和人君と一緒に出て行くし」


 しまった。俺と陽春が付き合ってるのはバレてるからそうなると、必然的に笹川さんと達樹も一緒に居ることがバレてしまう。


「隠さなくていいのに」


「隠してないから。ほんとに付き合ってない」


「そうなの? 小林君」


 立夏さんが笹川さんじゃ無くて達樹に聞いた。


「ほんとだよ。まだ付き合ってない」


「何で『まだ』って付けるのよ」


 笹川さんが達樹に怒った。


「ふーん、じゃあもうすぐか」


 冬美さんが言った。


「わ、私たちの話はいいのよ。それより、気になるのは何で2人が文芸部に入ったのかってことよ」


 笹川さんが反撃に転じた。


「そりゃ、私たち本が好きだし」


 冬美さんが言う。


「それもあるだろうけど、なんで今のタイミングなのかなあって」


 笹川さんがにやりとして言ってきた。


「私の理由は皆さんの想像通りよ」


 立夏さんが言った。


「え?」


 俺は驚いて立夏さんを見た。だが、立夏さんはそれ以上何も言わない。


「ほらあ」


 陽春が俺を肘でつついてくる。そんなこと無いと思ってたけどそうなのか? しかし理由が分からない。


「でも、どうして……」


「私に親切にしてくれる人はいつも下心が必ずあって何か要求してきたけど、そうじゃない人が一人居たってこと」


 そうか。俺は立夏さんに傘を貸したがその後は何も求めなかった。それは俺と立夏さんでは世界が違いすぎるからだけど、立夏さんは俺が何もしなかったことが新鮮だったのかもしれない。


「手作りクッキー送っても何にも反応が無いんだもん」


 立夏さんが俺を見て言う。


「そ、それは……」


「でも、今これを話すって事はもう大丈夫って事だから。安心して、陽春ちゃん」


「え?」


「あなたから和人君を奪おうなんて思ってないから」


「そうなの?」


「うん。あなたたちの間に入れないって事がだんだん分かってきたし。私は和人君が嫌うようなことはしないわ」


「そ、そっか。じゃあ、これからもよろしくね! 立夏さん」


「うん、よろしく。あ、でも、もしも別れるようなら次予約しておくから」


 立夏さんが俺を見て言う。


「わ、別れないし!」


 陽春が立夏さんに言う。


「もしも、よ」


 立夏さんが陽春に言った。


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