第55話 推しキャラ

 『イリヤの空、UFOの夏』の推しキャラを三上部長は聞いていく。


「じゃあ、冬美さんは誰が推しかな?」


 三上部長は冬美さんに聞いた。


「私は水前寺部長ね。キャラが濃くて面白いしすごく魅力的」

「私も部長かな」


 雪乃先輩も部長のようだ。

 冬美さんと雪乃先輩は揃って水前寺部長が推しか。このキャラは新聞部の部長ですごくパワフルでハチャメチャな行動をするが、頭はとにかくキレる人だ。主人公の親友でもある。


「雪乃先輩って三上部長と付き合ってますし、やっぱり部長キャラが好きなんですね」


 上野さんが言う。


「そ、それとこれとは関係ないでしょ」


「そういえば、やっぱり姉妹って趣味似るんですか?」


 上野さんが冬美さんに言った。


「そんなわけないでしょ。私は三上部長はタイプじゃ無いから」


 冬美さんが言う。三上部長も微妙な表情してるな。そりゃそうか。


「……それじゃあ、上野さんは誰が推しかな?」


 三上部長が話を戻した。


「私は途中までしか読んでませんけど、主人公の妹ちゃんかな。素直じゃ無いけど兄思いなところがいいですよね」


「あー、後輩キャラの上野さんらしいな」


「そうですか? 私は一人っ子なのでよくわかりませんけど。でも、櫻井先輩のようなお兄ちゃんが居ればなあって最近思います」


 そう言って俺を見る。そう言われてもなあ。


「櫻井先輩、お兄ちゃんって呼んでいいですか?」


「なんでよ!」


 陽春がその言葉にすぐ反応した。


「陽春ちゃん」


 そのとき、冬美さんが陽春をじろりと見た。


「は、はい! すみません!」


 陽春はまた立ち上がって直立不動になった。


◇◇◇


 そんなこんなで読書感想会は終わった。その間に陽春はあと二回ほど冬美さんに怒られていた。


 そして、最後に三上部長が言う。


「これで中間試験の終わりまで部活は中止となる。全員、試験に集中して頑張るように」


「はい!」


 陽春一人が大きな声で返事をした。他の部員はただ頷いている。


「赤点を取ったら部活に参加できないからそのつもりでね」


「え!」


 雪乃先輩の言葉に陽春が驚く。


「そんなルールありましたっけ」


「他の部がそうやってるというのを聞いて、うちの部も今回から取り入れることにしたのよ」


「えー! やめましょうよ、そのルール」


 陽春が焦っている。

 

「どうして? 赤点じゃ無ければいいでしょ? それとも陽春ちゃんは危ないの?」


「うっ……がんばります……」


 珍しく陽春の声が小さくなった。


「あー、陽春先輩が居ないと部の雰囲気大きく変わりそうですね」


 上野先輩が言う。


「うぅ、雫ちゃん。ウチの心配してくれてるの?」


「いえ、陽春先輩がいないなら櫻井先輩は高井先輩たちと一緒に帰るのかなあって思っただけです」


「そ、それは困る!」


「まあ、頑張ってください」


 上野さんはにこりと笑うと部室を出て行った。その後を不知火が追いかける。


「うぅ……和人……」


「そうならないように頑張ればいいだけだろ。俺も協力するから」


「うん、頑張る」


 そういう俺も頑張らないと。

 勉強会もあるからそこで何とかしたいな。




――――――

※この作品はまだまだ続きますが、並行して新作ラブコメ「はぐれ者の俺がクラスのアイドルと同じ電車に乗り合わせたら秘密の関係が始まった」を公開していきます。こちらは30話程度で終わる予定です。

https://kakuyomu.jp/works/16818093078269449686

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