第38話 新入部員 part2
木曜の放課後。陽春と俺、それに高井さんと長崎冬美さんの4人は文芸部の部室に向かった。
「浜辺陽春、以下4名。入ります!」
陽春が先頭に立って部室に入った。
「はい、いらっしゃい」
三上部長が言う。
長崎先輩は入部届を準備していた。
「さ、冬美。書いて」
「……準備万端ね」
「そりゃ、もう。気が変わらないうちに書いてもらわないと」
「大丈夫よ。逃げないから」
長崎冬美さんは入部届を書いて長崎先輩に出した。
「じゃあ、新入部員の自己紹介だな」
三上部長が言う。
「あー、長崎冬美です。よろしく」
「ところでだ。長崎さんが二人になったんだが、どうする?」
三上部長が言ってきた。
「え、お姉ちゃんは雪乃って部長から呼ばれてるんじゃないの?」
「いや、俺は部内では長崎さんと呼んでいるぞ」
「そうなんですか……あー、そういうことですね。部内でも雪乃と呼びたいと」
長崎冬美さんが三上部長に言う。
「え、そうなの?」
「い、いやあ、そういうわけじゃ……」
「いいですよ、私は冬美で。姉は雪乃と呼んであげてください」
長崎冬美さんが言った。
「そ、そうか」
「ちょっと、冬美……」
部長は了解したが、長崎先輩は戸惑っていたようだ。
「じゃあ、俺たち2年生はどうする? 雪乃先輩と冬美さんでいいですか?」
「うん、いいわよ」
長崎冬美さんが言った。
「ちょっと。櫻井君に冬美が名前で呼ばれるわけ?」
高井さんが言う。
「しょうがないでしょ。あ、じゃあ、立夏も名前で呼んでもらえば」
「えー!!」
冬美さんの言葉を聞いて陽春が大声を出した。
「だって、浜辺さんも付き合う前から名前で呼ばれてたんでしょ。だったら、いいじゃない。そうだ、2年生は全員名前で呼びあいましょうよ。ね、陽春さん」
「はあ?」
陽春が大声を出す。
「陽春、それぐらいいいんじゃないか」
じゃないと高井さんだけ除け者感が出てしまう。
「はぁ。じゃあ、立夏さんと冬美さんね」
「うん。それに和人君ね」
高井さんが俺を呼ぶ。
「はあ?」
陽春が大声を出す。
「いいじゃない。『君』が付いてるし。陽春さんは呼び捨てでしょ」
冬美さんが言う。
「うーん、わかった。ウチは和人って呼ぶから、立夏さんと冬美さんは和人君って呼んでよ」
「わかったわよ」
こうして、俺たちは名前で呼び合うことになった。
「よし、じゃあ、今日は創作だな。冬美さんはどうする?」
「私は部の本を読んでます」
「そうか。じゃあ、開始!」
俺は書評を書く前提でまたSFを読み出した。
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