第39話 バーベキュー

 ゴールデンウィーク後半の4連休。陽春は中学時代の友達と会ったりと何かと忙しく、俺が会えるのは5月5日の子どもの日だけ。その日に浜辺家でバーベキューをするというので俺はお呼ばれしていた。


 熊本駅前で陽春と待ち合わせる。今日は天気もよくて気持ちいい。陽春はパーカーにショートパンツという姿でスポーティーな感じだ。


「和人、待った?」


「いや、今来たところ」


「ふふふ」


「何?」


「恋人っぽいやりとりだね」


「そういえばそうか」


「うんうん。行こ!」


 陽春が俺の腕を取る。そして、陽春の家に向かった。


「おお、来たか。今からバーベキューの準備をするからちょっと手伝ってくれ」


「はい」


 家に着くと陽春のお父さんの君弘さんに言われ、バーベキューの道具を一緒に準備する。バーベキューなどやったことがなかったので、言われるままに道具を庭に持ってきて炭を入れた。君弘さんが着火剤に火を付ける。


「あとは火が炭にしっかり移るまでうちわで扇ごう」


「はい」


 俺と君弘さんでうちわであおいでいると、陽春とお姉さんの亜紀さん、お母さんの奈津子さんが食材を持ってやってきた。


「和人、ごめんね、手伝わせて」


 陽春が俺の近くにやってくる。


「いいよ、ご馳走になるんだし」


「うん、今日はたくさん食べてね」


 その様子を見ていたお姉さんの亜紀さんが言う。


「あー、今日は暑いねえ」


「そう? あ、飲み物持ってこなきゃ」


 陽春は飲み物を取りに行った。その好きに亜紀さんが俺の近くに来る。


「和人君、こんにちは」


「お久しぶりです、亜紀さん」


「どう? 交際は順調?」


「まあ、そうですかね……」


「何か困ったら相談してよ。あ、連絡先交換しておこう」


 すぐ近くで小声で言われて少しドキっとしてしまう。


「そ、そうですね」


 俺はスマホを出し亜紀さんと連絡先を交換した。そこに陽春が来る。


「お姉ちゃん、何してるの!」


「何って和人君と連絡先交換してるんだよ」


「なんでよ! 余計なことしないで」


「あら、ダメだった? 和人君から相談あるときに必要かなって思ったんだけど。別に。あんたから奪ってやろうとか思ってないよ」


「そ、そんなこと思ってないけど……」


「陽春、ダメだったか?」


 陽春に聞く。陽春が機嫌を損ねるようなら削除した方がいいだろう。


「別にいいよ。お姉ちゃん、変なこと和人に言ったらダメだからね」


「はいはい、必要なときしか連絡しないから」


 陽春が飲み物を持って俺に近づいてきた。


「はい、これ」


「ありがとう」


「お姉ちゃんがいろいろ言ってくると思うけどあんまり相手にしないでよ」


「わかってる」


「和人はウチのものだからね」


 陽春が俺の服の裾をくぃっと引っ張った。


「大丈夫だって」


 俺は思わず陽春の頭をなでてしまう。


「うん」


 陽春が俺を見つめる。


「わー、バカップルはじまった」


「うるさい!」


 亜紀さんの言葉に陽春が怒った。俺は慌てて手を引っ込める。しまった、家族みんな居るのに。


「ハハ、でもこの間よりさらに仲良くなったみたいね。いいことよ」


「そ、そうですかね……」


「うんうん。その調子だね」


 亜紀さんの言葉に俺は少し自信を持った。


「じゃあ、肉焼くよ」


 奈津子さんが肉を載せていく。亜紀さんも野菜を載せ始めた。陽春は紙皿に焼き肉のたれを入れ、箸とともに俺に渡してきた。


「はい、どんどん食べて」


「ありがと」


「ほい! 焼けたよ」


 俺が肉を取る前に奈津子さんが俺の皿に肉を入れ始めた。


「あ、どうも」


「今日は和人君が来るから多めに買ってるからね。どんどん食べてね」


「あ、はい」


 俺は肉を食べ始めた。これは美味い。なるほど、バーベキューって炭の香りがしておいしさが増すんだな。俺は初めてのバーベキューに夢中になり、どんどん食べ始めた。


「さすが、男の子ねえ」


 奈津子さんがさらに肉と野菜を載せていく。気がつけば俺は相当食べていた。


「まだ行けるでしょ?」


「いや、もうさすがに……」


「そう?」


 俺は満腹になり、もう食べられなくなった。


「ふぅ」


「和人、お腹いっぱい?」


 陽春が聞いてきた。


「もういっぱいだよ」


「そっか。ちょっと休んでいく?」


「そうだね」


「じゃあ、ウチの部屋来る?」


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