第37話 長崎冬美
結局、最後まで長崎冬美さんは文芸部に参加した。
「それじゃあ、失礼しまーす!」
陽春が大声を出して、我々2年生組は退出する。4人で帰りを歩いた、俺は長崎冬美さんが結局入部するのかどうかが気になっていた。
「長崎さん、入部するの?」
「は? しないって言ってるでしょ」
「そうなんだ」
「立夏がついてきて欲しいって言ってるからついてきてるだけ」
「ちょっと、冬美……」
「これぐらいはいいでしょ」
そうか、高井さんが入部直後で不安だから長崎さんが付いてきてるのか。
「だいたい、あんたたちが付き合いだしたからでしょ」
「え?」
長崎さんの言葉に驚く。
「カップル2組のところに1人で居るって厳しいわよ」
「そ、そうだよな」
確かに自分がそういう立場だったら厳しそうだ。
「高井さん、居心地悪くしてごめん」
俺は高井さんに謝った。
「謝らないでよ。私は好きで入ったんだから」
「そ、そうか」
「大丈夫、次は一人で行くから」
「うん。俺もフォローするから安心して」
俺は思わず言った。
「え? 和人、高井さんのフォローするの?」
陽春が言う。
「俺だけじゃなくて陽春もするんだよ」
「あ、そうだね……」
「嫌ならいいから。櫻井君だけでいい」
高井さんが陽春に言う。
「い、嫌じゃないから。ウチもフォローする!」
「結構よ。櫻井君にお願いするわ」
「いや、ウチにもさせてよ」
「いらないから」
何か揉めだした。まずいな。
「あんた、彼女なんだから、もっとどっしり構えなさいよ。見苦しい」
長崎さんが陽春に言った。
「え?」
「だから、彼氏がちょっと他の女に優しくしたからってうろたえないでって言ってるの」
「う、うん。そうだね……。ウチ、彼女だもんね」
陽春が元気が無くなったようだ。
「陽春、ごめん。心配させたね」
「だ、大丈夫だから」
「いや、俺が悪かった」
「ううん、大丈夫」
「でも……」
「大丈夫だって!」
陽春が大声で俺に言ってきた。
「そ、そうか」
「うん」
でもやっぱり落ち込んでいるように見える。俺は陽春の手を握った。
陽春が驚いて俺を見る。
「彼女なんだから、手をつないで帰ろう」
「うん!」
陽春は元気を取り戻したようだ。
「あー、何か始まってるし。これは立夏、きついね」
「でしょ。こういうの見せつけられるんだから。さすがに堪える」
「はぁ。仕方ないか。私も入るわよ。文芸部」
「え!?」
俺と陽春は驚いて長崎さんを見た。
「いいの?」
高井さんが長崎さんを見る。
「元はと言えば全部私のせいだし。それぐらいの責任は取るわ」
何が長崎さんのせいなのかはわからなかったけど、とにかく入部することにしたようだ。
「木曜から、よろしく」
こうして長崎冬美さんも文芸部に入ることになった。
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