第26話 雨の教室
平川楓の一件以来、笹川さんの達樹に対する態度が幾分柔らかくなったように思える。
昼休み。俺たちは4人で屋上に集まろうとしたが、雨だった。
雨の場合、今までは仕方なくバラバラで食べていたが、今日は達樹がグループにメッセージを送った。
達樹『教室で4人で食べないか?』
陽春『うちはいいけど』
理子『仕方ないなあ』
俺たちは結局教室でも4人で集まることにした。
そこにクラスの委員長・山崎奈美が近づいてきた。
「あれ? なにこのグループ? 初めて見たけど」
「あー、ちょっとね」
「へー、浜辺さんと櫻井君、本屋でも一緒だったよね」
「うん。文芸部も入ったから」
「なるほど。じゃあ、そっちはいいとして、小林君と笹川さんか」
「何よ」
笹川さんが委員長をにらむ。
「あ、なんでもないよ。ハハ、じゃあね」
委員長は去って行った。
だが、やはり周囲の男子・女子の目は気になるところだ。
特に高井さんがこちらをチラチラ見ているのは気になる。
「なんかやっぱり居心地悪いな」
「だな。晴れたら屋上行こう」
「うん」
そんなことを話していたが次第にいつものノリになっていく。
「今日は文芸部か?」
達樹が聞いてきた。
「そうだよ!」
陽春が答える。
「文芸部は新入部員いるんだっっけ?」
「今は居ない」
「やばいんじゃ?」
「そうだね。あと1人は必要だから」
「でも、まだ入る可能性はあるよね」
俺は言った。
「うん。新入部員が入るならそろそろ来ないとやばいね」
「そうだね」
「幽霊部員とか居ないの?」
俺は聞いてみた。入部したけど来ない人とかが居るんじゃないだろうか。
「居るけど、結局部活に参加した人数で判断されるみたいで」
「そうか、じゃあダメか」
「達樹は何か部活動入らないの?」
笹川さんが達樹に聞いてきた。
「俺? 俺は部活動はもういいよ。いろいろあったし」
「そっか」
「それに理子を送らないといけないし」
「ちょっと、教室でそれ言わないでよ」
笹川さんが小声で言う。
「いいじゃん」
「そういえば、そんなこと言ってたな。今日も行くのか?」
俺は達樹に聞いた。
「もちろん! こういう雨の日こそ行かないと」
「アーケードだから雨は関係ないけどね」
「そりゃそうか」
「いいなあ! ウチも送られたい!」
陽春が言った。
「いや、送ってるだろ」
俺が言う。図書委員の時も文芸部の時も電停までは送っている。
「だって、毎日じゃ無いから」
「そりゃそうだけど」
今は月曜、火曜、木曜だけだ。
「水曜と金曜もお願いしたいなあ」
「……陽春さえ良ければ俺はもちろんいいよ」
「やった!」
つまり、俺は毎日、陽春と一緒に帰る約束をしたということか。
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