第25話 平川楓
月曜の一限目の休み時間。私、笹川理子は平川楓を屋上に呼び出していた。
私と平川楓は中学の時には同じクラスだったし、体育会系女子としてよく比べられた。それもあってか、楓はとにかく私にライバル心を燃やしてくる。私がテニス部でいい成績を上げると自分は卓球部でそれを上回る成績を上げて自慢してくる。学校の成績でもそう。私は気にしていないが、楓はいつも私を気にしていた。
そんな楓の元カレと私は仲良くしている。これ以上仲良くなる前に、楓に話を通しておかないと、彼女が何をしてくるかわからなかった。
「久しぶりね。わざわざこんなところに呼び出して何?」
楓が言う。
「達樹のことで話があるの」
「達樹? 小林達樹のこと?」
「そう。達樹が私に声を掛けてきた」
「はあ? ナンパでもされたの?」
「そんな感じ」
「達樹が理子にね。あんたのことは達樹に話していないはずだけど」
「そうよ。私との関係は知らなかった」
「まあ、私と付き合うぐらいだから、理子に惹かれてもおかしくないか。それで? 付き合うの?」
「そうなるかもしれない」
「ふーん。だから私に話しに来たの? 自慢?」
「なんでよ。楓が怒るかもしれないと思って」
「怒らないわよ。もう、達樹なんていらないから。あんたにあげるわ」
そう言って、楓は去って行った。
とりあえず楓に話は通した。これで大丈夫だろうか。あまりにあっさりした態度に不安が残った。
◇◇◇
昼休み、いつものように浜辺陽春と笹川理子が屋上に行ってしばらくした後、俺と小林達樹は屋上に向かおうとした。すると、廊下に知らない人が居て俺たちを待ち構えている。背が高くショートカットの女子、なんとなく雰囲気が笹川さんにも似ているような。
「か、楓!?」
達樹が言ったことでこの人が
「久しぶりね、達樹。あんた、理子に手を出してるの?」
「な! だったら、なんだよ」
「私にフラれたから理子ってこと? 分かりやすいなあ」
「違う! そんなこと言うな」
達樹が怒った。
「そんなに私のこと忘れられないの? だったら、考えてあげてもいいよ」
「何をだよ」
「どうしてもっていうなら、やりなおしてもいいってこと」
「はあ?」
「どうする? 達樹?」
達樹は悩んでいるのか? いや、怒りを抑えているように見えた。
「俺たちはもう終わったんだよ。じゃあな」
達樹は小走りで平川さんの元を離れた。俺も慌ててついていった。
屋上に着いた俺たちは陽春と笹川さんのところに合流する。だが、いつもと違う達樹の様子にすぐに2人は気がついた。
「どうしたの?」
だが、達樹は何も話さない。仕方なく俺が話す。
「いや、元カノさんと会ってさ」
「え!?」
「達樹、何か言われたの?」
笹川さんが言った。
「やりなおしてもいいっていうから断っただけだよ」
「はあ? 楓、そんなこと言ったんだ……」
笹川さんは驚いたようだった。
「ごめん。たぶん、私のせいだ。達樹とのこと話したから」
笹川さんはうつむいて言う。
「そうだったんだ」
「うん。私への嫌がらせのためにそんなこと言ってきたんだと思う」
「そっか。でも、もう俺には関係ないから大丈夫だよ、理子」
「ごめん、迷惑かけて」
「大丈夫。もう忘れて、みんなでランチ楽しもうぜ!」
達樹はいつものように明るく言った。
「そうね。達樹、お詫びするから今日ファミレス来て」
「いいのか?」
「うん。何かおごる」
「ラッキー!」
達樹は完全に機嫌が直ったようだ。
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