第27話 新入部員
文芸部に入った俺は、火曜に読書感想会の活動を行い、木曜を迎えた。
「浜辺陽春、櫻井和人、来ました!」
陽春は相変わらず大きい声を張り上げて、部室のドアを開けた。
三上部長と長崎先輩は既に来ていた。
「やあ、浜辺さんと櫻井君。相変わらず仲いいね」
部長が俺たちをからかう。
「そうですか? アハハハ」
陽春が頭をかいている。
「そういえば、1年生って来ました?」
俺は一応聞いてみた。
「いや、来てないね」
「じゃあピンチじゃないですか?」
「来月いっぱいで来なかったらピンチだな」
結局待つしか無いのだろうか。
そんなことを思ったときだった。
「失礼します」
ドアが開いた。
「お! 1年生か?」
だが、そこに入ってきたのは見知った人だった。
「た、高井さんに長崎さん!?」
「あら? 冬美来たの?」
長崎先輩が妹に言う。
「うん。立夏が来たいって言うから。私は付き添い」
「そう。立夏ちゃん、文芸部に入りたいの?」
「はい、2年1組の高井立夏です。見学いいですか?」
「もちろん、大歓迎よ。是非是非」
長崎先輩が椅子をすすめ、高井さんと長崎さんは座った。
ふと、陽春を見ると、やっぱり頬が膨れていた。不満そうだ。
「ようこそ、文芸部へ。まずは活動内容を紹介しよう」
三上部長が2人に活動内容を説明する。
その間に陽春が小声で話しかけてきた。
(やっぱり高井さん、和人狙ってるよね)
(気のせいだって。そんなわけないだろ)
(だって、怪しいもん)
陽春がふてくされる。それに気がついた長崎先輩が俺に小声で尋ねてきた。
(陽春ちゃんどうしたの?)
(いや、高井さんといろいろありまして)
(そうなんだ。仲悪いの?)
(そういうわけじゃ……いや、そうかもしれないです)
(そうなんだ。うちの妹とは?)
(あ、妹さんは大丈夫だと思います)
(そっか)
その後、長崎先輩は妹の冬美さんと何か小声で話していた。
「……と、こんなところかな」
三上部長の部活動案内が終わった。
「面白そうなので是非入部したいです」
「えっ!?」
陽春が声を出した。
「浜辺さん、何か?」
「いや、あのー、なんでもないです」
「そう。じゃあ、入部届出します」
「そうか、ありがとう! ……冬美さんはどうする?」
三上部長が言う。
「あー、私はいいです」
「え-? 入ってよ」
長崎先輩が言う。
「なんで姉が彼氏とイチャイチャしている部に入らなきゃならないのよ」
「イチャイチャとかしてないから。ね?」
長崎先輩が俺たちを見た。
「え、えーと」
「うーん、してるかな」
陽春がはっきり言った。
「陽春ちゃん!」
「やっぱりね。私は遠慮しとく。立夏、がんばって」
「うん」
「じゃあ、私は帰るから」
そう言って、長崎冬美さんは出て行った。
「浜辺さん、櫻井君、よろしくね」
高井さんは俺たちを見てそう言った。
「う、うん……」
「よろしくな……」
「なんか歓迎されてない雰囲気感じるんだけど」
「そんなことないよ。でも、なんで急に文芸部入ろうと思ったの?」
陽春が高井さんに聞く。
「だって、部員が少なくてピンチなんでしょ? 浜辺さんがお昼休みにそう言ってたのが聞こえたから」
陽春は大声だから聞こえてたか。
「そうだけど、1年生が入らないかなって話だから」
「でも2年生でもいいんでしょ?」
「う、うん。助かる……けど」
「けど?」
「……入部目的がよこしまなのは困る!」
陽春が大声で言う。
「よこしま? 何のことかしら」
「ここは文芸が好きな人の集まりだから。他の目的で入らないでってこと」
「他の目的なんて無いわよ。私も本好きだもん。知ってるでしょ?」
「う、うぅ……」
陽春はあっさり言い負かされたようだ。
「浜辺は何を言ってるんだ?」
三上部長が俺に聞いてくる。
「おそらく、勘違いしてるみたいなので大丈夫です」
勘違い、だよな……
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