第21話 ファミレス2

 食事をしながら、俺たちは今日のことを話していた。


「和人たち、なんで遅れたんだ?」


「いや、本屋に行ったんだけど、高井さんと長崎さんも一緒に来て」


「え! 2トップが? なんで?」


「文芸部のおすすめの本を知りたいって」


「そんな理由で?」


「絶対違うよ! 高井さんが和人を狙ってるんだって」


 陽春が言う。


「え? 高井さんが和人を?」


 達樹が驚いて言った。


「俺は陽春の勘違いだと思うんだけど」


「うーん、高井さんって去年も同じクラスだろ?」


 達樹が俺に聞く。


「うん」


「去年、何かあったのか?」


「いや、ほとんど話したこと無い」


「怪しい」


 陽春が言う。


「何がだよ」


「『ほとんど』ってことは少しはあるって事でしょ」


「そりゃ……そうだけど」


「何話したの?」


「傘貸しただけだよ」


「傘?」


「うん。高井さんが傘忘れて困ってて。俺は普通の傘と折りたたみ傘を持ってたから」


「ふーん」


「後でお礼の手作りクッキーもらったけどさ」


「はあ? 手作り? めっちゃ脈あるじゃん!」


 陽春が大声を出す。


「無いよ。それ以外話したこと無いし」


「うーん、そうなんだ……あ、思い出した!」


「何?」


「月曜日に言ってたでしょ。最近、高井さんと何かあったか聞いたとき」


「あ」


 そうだった。月曜の朝に高井さんに話しかけられたことについて、最近何かあったか陽春に聞かれたんだった。そのとき、ゲーセンでのことは達樹と相談して話すって答えた。


「え、何の話?」


 達樹が聞いてきた。


「いや、だから高井さんとの絡み。土曜日にゲーセンで」


「あー、絡みと言えば絡みだけど」


「何があったの?」


 俺と達樹は顔を見合わせた。土曜日、2人に話しかける前に2トップに話しかけていたとは言いづらい。


「言わないと理子にもこのこと話すからね」


 陽春が達樹の弱点を突いてきた。


「そ、それは勘弁! 話すから、理子には内緒で」


「わかったから、話して」


「だから、土曜日、2トップに声かけたんだよ。で、フラれた」


「え、ウチらに声かける前?」


「うん」


「ふーん、何? 誰でもいいから声かけてたの?」


 陽春がにらんできた。


「違う違う! 2トップだけだって」


「で、フラれてウチらに来たと」


「いや、元々、理子と浜辺さん、いいなあって話してたんだよ。な?」


 達樹が俺に振ってくる。


「ま、まあな」


「そしたら2人が居たからさ」


「でも、その前に2トップに声かけてたんだ」


「そ、それは……見かけたから、さ。同じクラスなのに知らんぷりもひどいだろ?」


「ふーん、まあ、いいけど」


 陽春は納得してくれたようだ。


「でも、そのときフラれたんだよねえ?」


「そうなんだよ。だから、嫌われることはあっても好かれることは無いと思うんだけど」


 達樹が言った。確かにそうだ。


「うーん、やっぱりウチの考えすぎなのかな……」


「そうだって。高井さんが俺を、とか無いから」


「なになに? 何の話?」


 気がついたら、笹川さんが立っていた。


「いや、高井さんの話だよ」


「ああ。陽春、今日へこんでたもんね」


「え! 言わなくていいから!」


「あ、ごめんごめん。お皿お下げしまーす」


 笹川さんが皿を下げてくれた。

 それにしても、陽春、へこんでたのか。誤解されないように気を付けないとな。


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