第19話 4人で書店
書店に到着すると、俺たちはまずSFのコーナーに向かった。相変わらず、特にたいした新刊は無かった。
「櫻井君、どれがお勧め?」
高井さんが聞いてくる。
「ふっふっふ。和人のお勧めはコレ!」
陽春が持っているのは、先日俺がすすめた中国SF『三体』だ。
「私は櫻井君に聞いてるんだけど」
高井さんが言う。
「そうだね、SF初心者にはこれとか」
俺が手に取ったのはハインラインの『夏への扉』だ。
「読みやすいよ。映画にもなったし」
「ふーん、そうなんだ。猫が出てくるの?」
表紙の猫を見て高井さんが言う。
「うん。猫好きならおすすめ」
「そっか。買おうかな」
高井さんは気に入ったようだった。
「長崎さんはやっぱりそれが気になる?」
長崎さんが手に取っていたのはコニー・ウィリスの『航路』。三上部長と長崎先輩が2人とも気に入っている本だ。
「うちにあるけど文庫じゃないから。文庫だと手軽でいいわね」
「うん。文庫で買いかえたくなるよね」
しばらくSFを見ていると陽春が言った。
「ね、そろそろ、漫画のコーナーに行かない?」
「陽春は漫画が専門だもんね」
「そうそう」
「漫画ね。見に行ってきたら?」
高井さんが陽春に言う。
「え-! みんなで行こうよ」
「私はここで櫻井君とSFの話してるから」
「……だって、和人も漫画のコーナー見たいでしょ?」
陽春がうるうるとした瞳で見つめてくる。
「そ、そうだな。俺も漫画のコーナー見たいかな」
「そう。じゃあ、みんなで行きましょうか」
「うん!」
全員で地下の漫画のコーナーに降りた。
「これがウチのおすすめ!」
陽春がラブコメ漫画を手に取って2人に見せている。
「そう」
高井さんと長崎さんはそれには構わず他の本棚を見始めた。
「うぅ……かずとー」
陽春が俺にそのラブコメ漫画を見せてきた。
「……面白そうだな」
陽春の本を手に取った。これは確かアニメ化もされた有名なやつか。俺は読んだことは無いが。
俺がその本を見ていると2人が近づいてきた。
「これは私も持ってるわよ」
長崎さんが言う。
「うん、私も読んだから。もっと何かあまり知られてない面白いものをすすめてもらえないかしら」
高井さんが陽春に言う。
「えっと……これとか」
「読んだ」
「じゃあ、これ!」
「読んでる」
「じゃあじゃあ、これ!」
「これはドラマ化もされたでしょ」
「うぅ……」
陽春のおすすめはメジャーなものが多いようだ。
そんなとき、俺は一冊の本が目にとまった。
「これって……」
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。通称『デデデデ』ってこの間、陽春が文芸部でおすすめにあげていたSF漫画か。
「何それ、面白そうね。さすが、櫻井君」
高井さんが俺が取った本に食いつく。
「いや、それウチが和人にすすめたやつだし! それに映画にもなったやつ!」
陽春が高井さんに言う。
「面白ければ何でもいいのよ。これも買おうかな」
「あ、俺も読んでないんで買うか」
2人で『デデデデ』を手に取りレジに向かった。
レジは少し混雑している。並んでいるときに高井さんが俺に話しかけてきた。
「ごめんね、今日は。お邪魔じゃなかった?」
「い、いや、俺と陽春はそんなんじゃないから」
「ふーん、そんなんじゃないんだ」
「う、うん」
「信用していいのかしら」
「え? ああ、どうだろう」
俺はごまかした。
「なにそれ」
高井さんはぷいっと前を向いた。
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