第18話 4人で電車

 4人で路面電車に乗り、街中に向かう。座席は空いていた。俺を挟んで陽春と高井さんが座り、高井さんの隣に長崎さんが座った。


「櫻井君、いつも本読んでるよね」


 高井さんが俺に話しかけてきた。


「え? ああ、まあね。友達も少ないし」


「小林君ぐらい?」


「うん。それと、浜辺さんかな」


「ふーん」


「ま、ウチは櫻井君の友達だよね!」


 陽春が偉そうに高井さんに言う。


「仲良さそうだよね」


 高井さんが言う。


「いやあ! それほどでも!」


 陽春が照れたように頭をかく。


「連絡先とか交換してるの?」


「ふっふっふ。当然!」


 陽春が自慢げに言った。


「ふーん。じゃあ、桜井君。私とも連絡先交換しない?」


「え?」


 俺は驚いて高井さんを見た。そして、陽春を見る。


「なんでウチ見るの?」


「いや、なんとなく。許可が必要かなと」


「べ、別にいいから! 櫻井君の好きにして!」


「そ、そうか」


 陽春、怒りそうな気がする。でも、ここで断るというのもおかしいし。連絡先なんて陽キャの皆さんは気軽に交換してるか。


「わかった。交換しよう」


「私ともしなさいよ」


 長崎さんもスマホを出してくる。


「わ、わかった」


 結局、俺は高井さん、長崎さんという2トップと連絡先を交換した。

 おそるおそる陽春を見ると、やっぱり頬を膨らませている。これは怒ってるな。


「いや、あの……」


「ねえ、和人! どこの本屋行こうか?」


 急に陽春は名前呼びで言った。


(おい、名前)


(いいでしょ)


 俺が小声で言っても陽春は平然としている。


「何? 名前で呼んでるの?」


 高井さんが言ってきた。


「あー、その――」

「うん! ウチと和人は普段は名前で呼びあってるんだ! 隠しててごめんね」


 陽春は高井さんに自慢げに言う。


「へー、あなたたち付き合ってるの?」


 長崎さんが俺たちに言ってきた。


「付き合ってないよ。仲良くなっただけ」


 俺は長崎さんに言った。


「うん、まだ付き合ってない!」


 陽春は「まだ」を付けて言った。


「ふーん。まあ、いいわ。何にしろ付き合っていないってことよね」


 高井さんが陽春を見て言う。


「そ、そうだけど・・・・・・」


 陽春はだんだん声が小さくなった。


「ちなみに、私たちも彼氏とか居ないよ」


 長崎さんが俺たちに言ってくる。


「そ、そうなんだ」


「そうよ。なかなかいい人居なくて」


 高井さんが言う。


「あれ? でも、この間、サッカー部の人に告白されてなかったっけ?」


 陽春が高井さんに言った。


「うん。でも断ったよ」


「へー、他にも――」


「浜辺さんも、昨日、告白の手紙もらったって聞いたけど?」


「え! なんでそれを……」


「陽春、そうなの?」


「あら、櫻井君は知らなかった?」


 高井さんが言う。


「わざわざ和人に言うことでも無いから。ハハハ」


「まあ、そうだよな。別に俺に言うことでも無いか」


 それはそうだ。


「……ごめん」


「え、なんで謝るの? 別に怒ってないし」


「うん。でも、ウチ、断ってるからね!」


「そ、そっか……」


 ちょうどそのとき、目的地の通町筋の停留所に電車が到着した。


「降りよう」


 俺たち4人は電車を降りた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る