第17話 屋上

 お昼休み、俺と浜辺陽春、笹川理子、小林達樹の4人はまた屋上に居た。


「今日は水曜だから、櫻井は暇だよな。一緒に帰ろうぜ」


 小林達樹がそう言った。


「そうだな」


 月曜は図書委員、火曜と木曜は文芸部だから水曜と金曜は何も無い。


「理子も一緒に帰ろうぜ」


「私はバイト」


「そうなんだ」


 笹川理子はほとんどの日にバイトをしている印象だ。


「バイトってファミレスだっけ?」


「そうよ」


「行っていい?」


 達樹が食いつく。


「ダメ」


「えー!」


「でも、みんなと一緒ならいいよ」


「ほんとか!」


 達樹が喜んでいる。みんなというのは俺も含んでいるんだろうか。何か気まずくなりそうだし、あまり行きたくないかも。


「よし! 今日はみんなでファミレス行こう!」


 陽春が元気よく言った。


「えっと……それは俺も含んでる?」


「当たり前でしょ! 和人が来なくてどうするの。せっかく理子が――」


「え?」


「あ、みんなでって言ったら当然、和人も含むって事だよ」


 陽春が言う。


「そ、そうか」


 何かごまかした感じがあったけど。やっぱり、俺も行くしかないのか。


「あ、私シフト5時からだからちょっと時間つぶしてきてね」


「そうか、じゃあ、どうする?」


「じゃあ、3人でゲーセンでも――」


 達樹がそういったとき、笹川さんが、小林を引っ張って小声で何か耳打ちした。


「あ、俺はちょっと行くところあるんだった。2人で何か時間つぶしてきてくれ」


 達樹が明らかに俺たち2人に気を遣って言っている。


「うん! ありがとう!」


 陽春が勝手に返事をした。俺の意見は関係ないようだ。


◇◇◇


 放課後、笹川さんは早々と帰り、それを追うように達樹も出て行った。

 そして、俺の席に陽春が来た。


「青年! 行こうか!」


「また青年かよ。まあ、行くか」


 俺は立ち上がった。すると、そこに高井さんと長崎さんが来る。


「あれ? 今日文芸部あるんだっけ?」


 高井さんが言う。


「ううん、無いよ」


 陽春が答えた。


「じゃあ、2人でどこ行くの?」


「……ちょっと本屋に」


 どこに行くとは決めていなかったが、陽春が勝手に言った。


「ふーん、じゃあ私たちも一緒にいい? 本に詳しい2人のおすすめを知りたいな」


 高井さんが言う。俺と陽春は顔を見合わせた。


「いいけど、俺はSF専門だよ?」


 高井さんと長崎さんに言う。


「初心者向けのを教えてよ。それに冬美はSFも読んでるんでしょ?」


「え、ああ、姉の持ってるやつは少しね」


 お姉さんは基本ミステリーだったよな。


「そうか、俺はいいけど、陽春はどうする?」


「え? ウチはもちろんいいよ!」


 陽春はなぜか少し焦っている感じで言った。陽春が2トップと絡んでいるところはあまり見たこと無いが、それほど仲良くはないのだろうか。

 不安だが、この流れだと4人で行くしか無いか。


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