第15話 文芸部の活動
「ま、俺たちのことは置いといて、入部を前向きに検討してくれると嬉しい」
三上部長は俺に言った。
「は、はい」
「簡単に部の活動内容を紹介しよう……」
三上部長と長崎副部長は俺に文芸部の活動内容を紹介してくれた。それによると基本的には火曜と木曜に活動。活動内容は読書感想会と創作。火曜は部員が読んだ本の感想を言い合う。テーマを決めることもあるそうだ。木曜は創作。ここで創作したものをまとめて文集にして文化祭で販売する。というものだった。
「俺、創作活動って、やったこと無いですけど……」
「別に小説とか詩を書かなきゃいけないってことはないぞ。書評とか好きな本の紹介文とかでいいんだ。だから、木曜は創作だけど書評のために本を読んでいてもいい」
「なるほど……」
それならなんとかなりそうだ。
「今日のところは体験入部にして、木曜日にも来てもらって正式に入るかどうか決めたら?」
長崎先輩が言った。
「はい、ではそうします」
「ウチとしては入って欲しいんだけどなあ」
陽春が俺の腕を引っ張る。
「ま、前向きに考えてるから」
それを見た先輩が言う。
「あら、この2人そういうこと?」
「もしかして付き合ってる?」
「「付き合ってません」」
俺と陽春が口をそろえた。
「そうなんだ……ちなみに私と部長はこの部で知り合って、付き合うようになったのよ」
「そうなんですか」
「だから……ね」
長崎先輩が俺の目を見て言った。要するに入部すれば俺も陽春と付き合えるかも、ってことだろう。もちろん、その目論見が無いとは言えない。というか、ほぼそのために入部しようと考えているのも確かだ。部の居心地が問題なければ木曜に入部だな。
「大丈夫ですよ。たぶん、入部します」
「ほんと! よかった-!」
陽春は嬉しそうだ。
それから俺たちは読んでいる本などについて話し合った。三上部長は古いSFから新しいものまで幅広く読んでいて、SF風味があるミステリーも読んでいるという感じだ。長崎先輩はその逆という感じだった。
「俺はあんまり古いものは読んでいないので、三上部長にいろいろ教えてもらいたいです」
「そうだなあ。まずは『星を継ぐ者』だな。それに『月は無慈悲な夜の女王』」
「ちょ、ちょっと待ってください」
俺はノートを出してメモを取り出した。
「あらあら、櫻井君は真面目ね。陽春ちゃんよりちゃんとした文芸部員っぽい」
「えー! なんでですか!」
「だって、陽春ちゃんは小説あんまり読まないもんね」
「ギクッ! でも、漫画でSFは読んでます。『デデデデ』とか傑作ですから」
「『デデデデ』ね」
俺は陽春が言った作品もメモした。
「あ、正確には『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』ね」
「『デッドデッド…』って長いよ!」
「『デデデデ』で検索すれば出てくるから」
そうやって、おすすめの作品を俺はメモした。
「それにしても、お二人って言わば真逆ですよね。最初は喧嘩ばかりでした?」
俺は先輩達に聞いてみた。
「そうだな。やっぱり喧嘩してたよ。気が合わないと思ってたな」
「だったら、どうして付き合ったんですか?」
恋愛の先輩から聞いておきたい。
「去年の文集作成の時に自分の好きな作品を一つ挙げるコーナーがあって、それが同じだったのよ」
「へぇー、なんて本ですか?」
「コニー・ウィリスの『航路』」
「あー」
俺も読んだことがあるSFミステリーの傑作だ。SFファンにもミステリーファンにも評価が高い。
「そこから仲良くなって、結局付き合うようになったってわけ」
「最初は喧嘩、そして付き合うようになるって素敵!」
陽春が2人を見つめてうっとりした様子で言っている。
「よし、私たちも喧嘩しよう!」
陽春が俺に言った。それってそのうち、付き合うってことを遠回しに言ってることになるけど……。
「でも喧嘩じゃ無いけど最初の出会いは俺が注意したことだったよな」
「そういえばそっか」
「え、なになに?」
長崎先輩が興味を持って聞いてきた。
「図書室でウチが騒いでたら、櫻井君に注意されたんです」
「まあ、図書委員なので」
「ウチ、声大きいから。でも、そうか。うちらも最初仲が悪くてってやつだね!」
だからそれ、付き合うこと前提になってるけど。まあ、嬉しいけどさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます