第7話 2対2
ピザを食べながら会話していると次第に2対2に別れだす。俺は浜辺さんと、小林は笹川さんと話すようになった。
「櫻井君はアニメとか見るの?」
「うーん、SFのやつは少し見るかな」
「SF?」
「うん。俺の趣味はSFの小説を読むことだから」
「そうなんだ。じゃあ、部長と趣味合うかも!」
「え、文芸部の?」
「うん。SFに詳しいよ」
「そうなんだ。話してみたいな……」
一方、横から聞こえてくる小林と笹川さんの会話はこんな感じだ。
「笹川さん、楓と仲いいの?」
「それ聞いちゃう?」
「え、なんで?」
「正直言って、仲悪いよ」
「え? そうなの?」
「うん。だから小林が私に声かけてきたって知ったら……楓めっちゃ怒るだろうな」
「そ、そうか。もう俺には関係ないけど」
「あー、楓を怒らせるためだけに言いたい!」
「ちょ、ちょっと。お願いだから黙ってて」
「ふふ、分かった」
笹川さんが笑っている顔が見えた。初めて笑顔を見たな。
「……そろそろ行かなきゃ」
笹川さんが言う。2時間近く俺たちはここに居た。最初はぎこちなかったが、話も盛り上がって結構仲良くなったと思う。
「私、バイトなんだ」
笹川さんが言う。
「うん、だからウチも帰るの」
浜辺さんが言った。
「そっか。じゃあ俺たちも帰るか」
小林が言った。まあ、こいつの目的は女子と仲良くなるきっかけ作りだから目的は果たしたか。
「でも、さ。せっかく仲良くなったからときどき4人で遊ばないか?」
小林が言った。浜辺さんと笹川さんはお互い顔を見あわせた。
「ウチはいいよ!」
「私もいいけど」
「そうか! じゃあ、連絡先交換してグループ作ろうぜ」
俺たちは連絡先を交換し、帰ることになった。
◇◇◇
帰り道、俺と小林は2人で話した。
「お前さ、ぶっちゃけ浜辺さん狙いだろ」
「え?」
小林に言われ思わず動揺する。確かに、今日で浜辺さんとかなり仲良くなった気がする。それに同じ文芸部に入るかもしれない。仲良くしたい、そういう気持ちがあるのは確かだ。
「別に隠さなくてもいいだろ。俺は笹川さん、行くからさ」
「何か恐い感じだが、ああいうタイプがいいのか?」
「まあな。元カノもあんな感じだし」
体育会系、気が強いタイプが好みか。
「お互い頑張ろうな」
小林が言ってくる。
「でも、どう頑張っていいか、俺にはわからないんだ」
俺は正直に言った。
「それに、浜辺さんに彼氏が居るかもわからないし」
中学の時、数回話しただけの女子を好きになったが、その子に彼氏が居たことがわかり、とてもショックだったことがあった。ああいうことは繰り返したくない。
「なるほどな。今日の感じじゃ彼氏が居るようには思えなかったが、確認はした方が良さそうだな」
「そうだよな」
浜辺さんのような明るく可愛い女子と俺のような陰キャがどうにかなるのだろうか。先行きを考えると気が重くなった。
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