第5話 アニメハウス

 浜辺陽春と笹川理子が居たのは九州アニメハウスというコーナーだ。アニメのグッズが置いてある小さい店でそこで2人はグッズを見ていたようだった。二人の私服は初めて見たが、二人ともパンツルックでボーイッシュな感じだ。浜辺さんはキャップもかぶっている。


「行くぞ。リベンジだ」


 小林が俺に言う。


「え?」


 俺が何か言う間もなく、小林は2人に突撃していった。


「やあ、浜辺さん、笹川さん」


「あれー?」


 浜辺さんが俺たちに気がつく。


「小林君に……櫻井君までいるよ。二人も遊びに来たの?」


「うん、そうだよ」


「そっか。ウチらもだよ!」


 浜辺さんは笑顔だが笹川さんは不審な顔で一言も発していない。やっぱり恐い。


「アニメ好きなの?」


「あー、うん。ウチがね」


 浜辺さんはアニメが好きだったのか。


「あのさ、ここ見た後はどうするの?」


「え、何か食べようと思ってるけど」


「そっか。俺たちもそろそろ何か食べようと思ってたんだけど、一緒にどうかな?」


 小林が頑張っている。だが、浜辺さんと笹川さんはどうするか、2人で話し合っているようだ。笹川さんのあの表情では難しそうだが……


「うん、じゃあ行こうよ! ちょっとここ見るから待ってて」


「おう! ゆっくり見てね」


 まさかのOKだった。小林が俺のところに来る。


「よっしゃ。上手くいったぞ」


「びっくりだよ。絶対無理だと思った」


「だから俺に任せておけって」


 小林は上機嫌だ。しかし、こいつ2トップ狙いだったのでは。女子なら誰でもいいのだろうか。

 でも、笹川さんのことは好みのタイプだとは言ってたな。まあ、俺も浜辺さんには少し興味があるし。


◇◇◇


 浜辺さんと笹川さんがしばらくアニメグッズを見た後、俺たちは食事に行くことになった。


「どこ行く?」


 浜辺さんが小林に尋ねる。


「上行く? ガーデンカフェ」


「ああ、ピザとかあったよね!」


「うん。天気もいいし」


「いいね!」


 小林と浜辺さんが行き先を決めた。俺と笹川さんは一言も発すること無く後ろを付いていった。


 ガーデンカフェは屋上にある。ここの屋上は庭園みたいなものが作られていて、椅子やテーブルも多数あるから、家族連れや高校生、カップルなども多い。


 ピザにポテトをいくつか頼んで俺たちは屋根付きの席に座った。浜辺さんと笹川さんが横に座り、対面に俺たちが座る。


「それにしても浜辺さんと笹川さん、仲いいんだね」


 小林が浜辺さんに聞いた。


「ウチと理子は中学が同じ部活だったからね。去年は同じクラスだったし」


「へぇー、何の部活やってたの?」


「テニス部!」


「そうかあ。やっぱり笹川さん、スポーツやってたんだ」


 小林が笹川さんを見て言った。


「なにその『やっぱり』って」


 笹川さんが今日初めて俺たちに口を開いた。やっぱりなんか恐い。


「いや、スポーツ少女って見た目だし」


「ショートカットだから? すごい偏見ね」


「ごめんごめん。でも、やってたんでしょ」


「まあね。中学で辞めちゃったけど」


「そうか。俺も1年の時は卓球やってたけど、やめちゃったんだ」


「知ってる」


「え? 知ってるの?」


「うん。私、かえでの知り合いだから」


 笹川さんはそう言って小林を見た。


「え? あ、そうなんだ……」


 急に小林が大人しくなった。


「……楓って?」


 俺はつい聞いてしまった。


「あ、卓球部の子。平川楓ひらかわかえで


 笹川さんが俺に言った。


「ああ、卓球部の……。って、もしかして卓球部のエース?」


 俺が言うと小林が俺を叩いてきた。


「そうだよ。よく知ってるね」


 笹川さんが俺に言う。なるほど、つまり、小林の元カノの知り合いか。

 しかし、「知り合い」ってのもひっかかるな。「友達」じゃないのか。

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