プロローグ 少女と決意


 その日、私は女神様に出会いました。

 母の要望によって訪れた小さな村の外れにあった小さな神殿は、もうずっと手入れが行き届いていないのか、古びてあちこちに蔦が絡まっていました。


 しかし、陽の光を浴び輝くその建物は神々しく見えて、私は導かれる様にその神殿へと足を踏み入れたのです。


 そして、それは間違っていませんでした。

 中央の祭壇に祀られていた女神像に苦しむ母へ祈りを捧げていると、目を閉じているにも関わらず目の前が眩く感じ、目を開けてみるとそこには神々しい女性の方が顔を顰めながら私を覗き込んでいました。


 真っ白なドレスに身を包み、背景に光を照らされ輝く金髪の女性の方はこの世のものとは思えないその美しさで、一目で女神様とわかるほどでした。

 まだ生まれて十二年、経験が豊富とは言えませんが、それでも私が見てきた……いえ、きっとこの先出会う人の中でもこの方ほど美しい女性はいないと確信できる程です。


 女神様は自分が何を司っているかを問いかけてきました。

 愛?光?もしくは水の女神様?

 私が思いつく限りの美しいものを挙げていきました


 しかしその女神様はなんとうんこの女神様でした。


 うんこというのは見た目や臭いで自然と敬遠していましたが、よくよく考えてみればうんこというのはこの世に生きるすべてのものが必ずするもので、生きる上では切っても切り離せない存在です。


 そう考えればこれほど美しい女神様がうんこを司っている事にも頷けます。

 きっとうんこが本当はこれほど美しい存在なんだと思いました。そう思い家に帰って調べてみれば、調べてみるほどわかるうんこの素晴らしさ。

 その事を女神様に伝えるために、その後も神殿に足を運びました。

 女神様との会話はとても楽しく、話し方も少し独特で初めはうんこの話をするためだけに来ていましたが、私は女神様の人となりも含めて好きになりました。


 話によれば女神様は元は人間でかつては聖女様だったという話です、容姿で聖女に選ばれたと言っていましたが、今の姿が生前と一緒であれば選ばれたのも頷けます。

 うんこ自体は汚物の塊ですが、誰もがするものです。ただ嫌われ、馬鹿にされるのはおかしい事です。


 心優しい女神様はそんな扱いにも仕方がないと諦めていました、ですが私は諦めたくありません。ならば私が女神様の代弁者……いえ、大便者としてうんこの素晴らしさを広めて見せましょう!


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