第15話 エンゲルの将校に襲いかかられました

私はルヴィとは別にされて牢獄の中に一人入れられた。


石畳は冷たい。女の子をこんな所に入れるなんてエンゲルは最低だ。

それにこいつらは私の両親を殺したのだ。私はそんな奴らに捕まって悔しかった。

それも親友と思っていたツェツィに裏切られたのだ。親友だと思っていたのに!


私の精神はもうぼろぼろだった。

更に、捕まりそうになった時に助けてくれたルヴィを私の友達を見る目がないから巻き込んでしまった。本当に私は最低の奴だ。


せっかくルヴィが出てきて、エンゲルの魔の手から助けてくれたのに、また捕まってしまった。これがよく言う所の小説とかゲームの強制力なんだろうか? エンゲル王国に売られる運命を変えることは出来ないんだろうか?


エンゲルに引き渡された後は処刑されると小説に書かれていた。

SNSとかには処刑される前にエンゲル王とか兵士とかに慰み者になっていい気味だとか書かれていた。


どうしよう?


このままじゃまずい!


でも、私にはどうやらチート能力も無いみたいだし、逃げ出しようがなかった。


ルヴィは別れしなに「少し待て」って言ってくれたけれど、これ以上帝国の騎士に迷惑をかけるわけには行かない。


私は途方に暮れてしまった。



私は前世は東京で普通にOLをしていたらしい。

歩いている子供の所にトラックが突っ込んでいくのを見て、思わずその子を突き飛ばしてトラックに弾かれてしまったのだ。

おそらくそのまま死んでしまったんだと思う。


田舎の両親はどうしたんだろうか?

お盆とか年末年始とかに帰るだけだったけれど、いきなり私が死んでしまったから悲しんだんだろうな……私は結局死ぬまで異性と付き合った事もなかったから、私の死を悲しんだ人は両親だけだったと思う。友人もそんなにいなかったし。前世はあまり大したことはなかった。


おそらく神様が私の最後の善行を慈しんでくれて、この世界に王女として転生させてくれたのだと思う。結構恵まれた生活を少し前までは送れていたと思う。

でも、私の記憶が戻るのが遅すぎたのだ。

もっと早ければ、王国の滅亡も防げたし、この世界の両親も殺さることもなかった。

なのに断罪されている時に記憶が戻ってもどうしようもないじゃない!


というか、どのみち転生させてくれるならば、ヒロインとかに転生させてくれればよかったのに!

何も悪役令嬢に転生させてくれる必要はないんじゃないの?


私は神様に文句を言いたかった。


そうだ。この前は出来なかったけれど、絶対に何かチート能力の1つくらい、神様が私に与えてくれているはずだ。魔術がダメなら怪力とか。


私は思いっきり牢の鉄格子を叩いてみた。


「ギャツ」

思わず痛さに手を押さえた。


全く鉄格子はびくともしなかったのだ。


怪力も与えられていなかった。


私はがっかりした。


そんな馬鹿なことをしている時だ。


私の牢の鉄格子の扉が開けられたのだ。


出してもらえるようになった?

一瞬私は期待した。


そんな訳はなかった。


「この女が元王女か」

そこには部下を引き連れた下ひた笑いをした偉そうな人間が入ってきたのだ。


私は思わず後ずさった。


「どのみち、本国に送られて処刑されるのだ。それまでに儂が味見しても良かろう。まあ、胸はないみたいで、俺の好みからは少し離れるがな」

男はそう言うと私をいやらしい視線で見てくれた。周りの部下の騎士たちもいやらしい笑みで私を見ていた。


これは貞操の危機だ。


こんなんだったら護身術を習っておくんだった。

私は後悔した。


「助けて! ルヴィ!」

私は思わず叫んでいた。


「ルヴィ、誰だそれは? ああ、あの一緒に捕まった騎士の名前か。いくら読んでも無駄だぞ。今頃、奴は拷問されて苦しんでいるところだ。苦しさに泣きながらお前の名前を叫んでいるかもしれんぞ」

男はにたりと笑って言ってくれた。


嘘! ルヴィは拷問を受けているの? 私のせいで本当にルヴィには悲惨な目に合っている。最悪だった。

「何だったらお前の騎士の前で犯してやろうか?」

男は舌なめずりして言ってくれた。


こいつは完全に屑だ。


絶対にやっつける。私は決めたのだ。


私は、昔、騎士団長が金的を蹴り上げたら良いと言っていたのを思い出したのだ。


もうやるしかない!


「喰らえ!」

私は下品な声をあげると男の股間を目指して蹴り上げたのだ。


しかし、そんなことは今までやったことはなく、なれないことをするから当然そんなうまくいくはずもなく、

「きゃっ」

空振りして、盛大にコケてしまったのだ。


それも変なことをしたから、身もあらわな格好になってしまった。

これはこの男に襲えと言っているようなものだった。


「ふんっ、自分で転けて、馬鹿なやつだ」

男は笑ってくれたのだ。


やばい。襲われれる!


男が私にのしかかろうとしてきた。


私は絶体絶命のピンチに陥ったのだ。

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