第13話 親友の館で、白馬の騎士の胸の中で眠りました
戦いの終わった後、私は移動すると言うルヴィに抱えてもらってシロに乗せてもらった。
そして、走っている間、ルヴィにしがみついて何とか耐えたのだ。
今回はルヴィもゆっくりと走ってくれた。
そして、それも、1時間位で降ろしてもらって休憩したのだ。
もう私はへとへとだった。
なんかルヴィも顔を少し赤くしていたが、何故か判らなかった。
熱でもあるんだろうか?
でも、私は到底人の事を構っていられる余裕はなかった。
「悪かったな、エリ。馬に乗るのがこんな大変だと知っていたら馬車を持ってきたんだが」
ルヴィが謝ってくれた。
「いえ、乗れない私が悪いのよ」
「うーん、しかしこのペースでいくとブレーメンまで4日はかかる。その間に必ず、今度はエンゲル軍が襲いかかってくる可能性があると思うんだが」
ルヴィは困った顔をした。
「ルヴィ、何とか我慢するから飛ばしてくれていいわよ」
私は覚悟を決めて言った。
「うーん、しかしな」
ルヴィは腕を抱えて考え込んでしまった。
これも乗馬の練習をサボった私が全て悪いのだ。
どうしよう?
私も少しは考えたのだ。
「そうだ。この近くのクレンツェ伯爵家のツェツィーリエとは、学園時代の親友なの。彼女は用ができたとかで早めに領地に帰ったけれど、そこに行けば馬車を貸してくれるかもしれないわ」
私は思いついて言った。
「クレンツェ伯爵の令嬢と友達なのか。あそこは海に面していて船も寄港できたな。船を借りられたら、ブレーメンまですぐに行けるかもしれない」
ルヴィが乗ってきた。
「船なんて貸してくれるかな?」
「クレンツェ伯爵家とは確か帝国も取引があったはずだ。なんとかなるだろう」
ルヴィの言葉に私達はクレンツェ伯爵家に行くことにしたのだ。
私達はその後、休み休み移動した。疲れた私はルヴィの胸の中で寝たりしていた。
そして、夕方にようやくクレンツェ伯爵家に着いたのだ。私がいたからだと思う。私はとてもルヴィに悪いと思ったのだ。ルヴィは気にするなと言ってくれたけど。
「アデリナ、無事だったの?」
応接に案内された私を、やってきたツェツィは抱きしめて聞いてくれた。
「えっ、なんで私が襲われたって知っているの?」
私は慌てて聞いた。まだ情報が伝わるにしては早すぎる。
「えっ、いえ、何かクラーラ様達が企んでいるような噂を聞いたから」
しどろもどろになってツェツィが答えてくれた。
「そうなの。いろいろあったんだけど、ルヴィが助けてくれたの」
「ルヴィ?」
「私の幼馴染なの」
私がルヴィを紹介した。
「ルヴィです。帝国の騎士をしておりまして、アデリナ様の身を帝国のディール伯爵家まで護衛するように伯爵家から依頼がありまして」
ルヴィはもっともらしく言ってくれた。
「そうなの。アデリナは帝国に行くの?」
ツェツィの目が光ったような気がした。
「おそらく、そうなると思うわ」
「そうなんだ」
私の答えにツェツィは普通に答えてくれたが、何か少し変だった。
「ツェツィ、出来たらあなたのところの船でブレーメンまで送ってもらえたら嬉しいんだけど」
「判ったわ。お父様に聞いてみるわ」
出ていったツェツィは少し経って、父親と思しきガッチリした体格の人間を連れてきた。
「これはこれはアデリナ様。災難でしたな」
伯爵は挨拶した後私の事を案じてくれた。
「それでブレーメンに行かれたいとか」
「伯爵、こちらで何とかなりますでしょうか」
ルヴィが金貨の袋が入った小袋を渡してくれた。
「これはこれは。これだけあれば十分でしょう。船は明日には出せます」
伯爵は現金なものでルヴィから金貨を受けとると急に機嫌が良くなった。
私達を歓待してくれようとした伯爵を、疲れているからという名目で私達はさっさと用意された部屋に入ったのだ。
部屋はルヴィと隣り合わせだった。
ルヴィは心配だからと私がお風呂に入る間、寝室にいてくれたのだ。
まあ、小さい頃は一緒にオフロに入ったこともあったので、問題ないと思ったのだが、流石に一緒に入るのには抵抗があったし、隣りの部屋にいられるのも少し恥ずかしかった。
けれど、私は久々の湯船に浸かってホッとした。
ルヴィはツェツィが少し怪しいと言ってくれたが、私はそうは見えなかった。
ツェツィとはお互いに外国人だったから仲良くなれたのだ。
私がハウゼン王国に帰る時に一緒に遊びに来たりもしていた。
だから、父も母も知り合いだった。両親がなくなったと聞いた時は一緒に泣いてくれたのだ。
ハウゼンが滅ぼされた後もツェツィだけは私と仲良くしてくれた。
1ヶ月前にどうしても先に帰らなければいけなくなってとのことだったが、今見た感じは私を裏切ったりはしないと思った。
風呂から上がって、寝ようとした時だ。
ルヴィが一緒の部屋で休むと言い出したのだ。
「えっ、でも、ルヴィに悪いわ」
私が言うと、
「気にしなくて言い。俺は騎士だから床に寝るのもなれている」
ルヴィが言ってくれたんだけど、
「それは悪いわよ。ベッドが広いから一緒に寝れるわ」
私はそう提案したのだ。
まあ、ルヴィとは昔はよく一緒に寝ていたし、
「でも良いのか?」
「何言っているのよ。今更じゃない。昨夜も一緒に寝たし」
そうだ。先日はくっついたツインベッドで一緒に寝たのだ。
私は問題ないと思おうしとした。
でも、ツインベッドとダブルでは感じが違った。
布団が完全にくっついている。
私の心臓がドキドキ言っているのが聞こえるのではないかと思えるほど気になった。
ルヴィは昔からイケメンだったけれど、改めて、横目で見ると、更にイケメンになっていたし、騎士になったからか体つきもがっしりしていてとても逞しかった。そのルヴィが横にいると思うとなんかドキドキが止まらないのだ。
「何だ、やっぱり、寝れないのか。なら俺が床で寝ようか」
「ううん、傍にいて」
私は思わず口にしてしまった。
何を言っているんだ。そうじゃなくて……
「じゃあ、昔やったように抱いてやろうか」
「えっ、いえ、そんな」
私は赤くなった。
「いろいろあったから興奮してねれないんだろう」
そう言うとルヴィは私を抱きしめてくれたのだ。子供の頃たまにしてくれたように。雷を怖がる私は、雷雨の時などよく、ルヴィの布団に潜り込んでいたのだ。
でも、今されたら、さすがに変だ。私は真っ赤になった。そんな、イケメンに抱かれるのなんて、なれていない。
最も昨夜はルヴィの胸で思いっきり泣いてしまったけれど……
ルヴィの体はとても暖かかった。
その暖かさは久しぶりに私が感じるものだった。
ドキマギしていたけれど、疲れていたのか、ルヴィの暖かさに癒やされたのか、私はいつの間にか寝てしまったのだった。
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