第11話 白馬の騎士視点2 リナに襲いかかっていた不届き者を成敗しました

俺はリナに会えないと知ると、さっさと使節団から抜けて帝国に帰った。


俺はやるせなかった。


リナの事をそこまで好きな訳ではなかったはずなの……心の中にぽっかりと穴が開いたみたいになったのだ。

こんなことになるなら、さっさと婚約を申し込むんだった……と後悔したが今さらどうしようもなかった。


俺はその空虚を埋めるように必死で働いたのだ。


俺が北方で民族の反乱と戦っている時だ。ハウゼンの政変を聞いたのは!


まあ、ハウゼンの仲の少数民族が反乱を起こしたという話だったが、俺も今、それを経験している。よくあることだと、俺はそんなに注意しなかったのだ。

こちらも、敵が神出鬼没での居所を探るのが中々大変で、俺が抜けられるような状態ではなかったのだ。


その俺のところにエンゲルの大軍がハウゼンに攻め込んだと情報が入ったのはそれから半年立った頃だった。

神出鬼没の反乱軍と戦っていた俺だが、さすがに慌てた。

このままでは、さすがのハウゼンもヤバいだろう。

ハウゼンの王妃の態度に思うところが全く無かったかと言うと否定できなかったが、一応ハウゼンは俺を1年間面倒見てくれたのだ。それにその時は知らなかったが、後から次男の嫁を出していたエンゲル王国から俺の引き渡しの要求があったがそれをハウゼンは蹴ってくれたと暗部からの情報で聞いていた。

命の恩人でもあるのだ。

その礼をこの前言ったら、

「あの男、昔から私を見る目がいやらしかったのよ」

エンゲルの国王を嫌悪するように王妃は言っていたが、このままでは、王妃も危ないだろう。


俺は決断を迫られたのだ。


「こうなったら、遠距離攻撃を行う」

俺は戦線の膠着を解くことにしたのだ。


「しかし、エルヴィン様。それは負担が大きいのでは」

「そうです。下手したらお体に触るかもしれません」

騎士団長等は必死に反対してきたが、こうはしていられなかったのだ。


まあ、父もなにかはしていると思っていたが、元々我が母と王妃は仲が良くはなかったはずだ。

そんな所に俺を出すなよという話だったが、「その時の情勢の緊迫具合では仕方がなかったのよ」と母からはいやほど聞かされていたが……


俺はリナの事も少し心配だったので、父からメンロスにも圧力をかけてほしいと依頼はしたのだ。


ここは時間がない。


皆の反対するなか、敵の本拠地と思われる所に俺は遠距離斬撃を放ったのだ。

凄まじい、衝撃が起こり、敵の本拠地を中心に相当の破壊があったはずだ。


さすがの俺も体がフラフラだった。

俺は、直ちに総攻撃を行うように命じたのだ。


あっけなく勝負はついた。


敵は俺の攻撃に度肝を抜かれたのだ。


敵は俺を神のように崇め出した。


後は騎士団長に任せて、俺は、ハウゼンに向かった。しかし、ハウゼンはもう、エンゲルに占拠された後だったのだ。俺は帝国内の対岸でその情報を聞いたのだ。


国王も王妃も殺された後だった。


俺は何も恩を返せなかった。


この仇は必ず取ると俺は心に誓ったのだ。


そして、リナだ。俺は直ちにリナのもとに向かおうとしたのだ。

しかし、そこに父から待ったがかかった。

メンロス王国は今は帝国の同盟国てあり、帝国から何だったらリナの事は引き取ると連絡したら、メンロスとしては王太子の婚約者であり、それを変更するつもりはないと返事があったというのだ。


俺はがっかりしなかったかと言うと嘘になるが、リナのためにはホッとした。


メンロスでは大切にされているらしい。

俺はもっと真面目にメンロスの貴族たちを調べされるべきだったのだ。


帝国にメンロス国王が親善で来るということで、メンロス国王とは親交もある父も本音を聞くということを聞いて、俺はとりあえず帝都に戻ろうとしたのだ。


その途中で俺も少し世話になったディール伯爵家に寄ったのだ。ハウゼン王妃の実家だ。

そこの前伯爵婦人、すなわちハウゼンの王妃の母は王妃の死を聞いて憔悴しきっていた。


「だから、あんな国にやるのは反対したのに! 貴方様のお父様と結婚していたらこんな事にはならなかったのに」

前伯爵夫人は俺の前で泣いてくれたのだ。

父とハウゼンの王妃の関係は少し聞いたことがあった。父が懸想したが、全く相手にもされなかったとのことだったと記憶している。


「エルヴィン様。孫はメンロスで元気にしていますでしょうか? 泣いていないでしょうか? この年寄は心配で毎日寝られないのです」

「判った。俺が様子を探ってみる」

俺はそう前伯爵夫人と約束したのだ。

それが俺の運命を変えた。リナの運命も。



旅人のふりをして、メンロスに入っても良かろうと思ったのだが、潜入するにはメンロスよりも、その隣国のロンメルツ王国の方が入りやすいみたいだった。


俺はアシムという商人に商船を用立ててもらってメンロスの国境付近の港町ブレーメンに降り立ったのだ。俺の愛馬シロと共に。


俺は偽の通行証を持ってメンロスの国境に一騎で向かった。


まさか、そこでリナがメンロスの衛士達に襲われているとは思ってもいなかった。


走っていく俺の遥か前に女が足がもつれて盛大にこけたのがみえた。

それは青髪の女だった。


その女をあろうことか衛士たちが襲いかかろうとしていたのだ。

メンロスの規律はどうなっているのだ。帝国軍でそんな事した奴を見たら、則座に処刑だ。

俺は女を助けるために飛び出したのだ。


シロが女に手を出そうとした衛士を蹴り飛ばしてくれた。

「ぎゃあっ」

男は跳ね飛ばされて、柵に突き刺さっていた。


「えっ」

こちらを向いた少女の目は暗くてよく見えなかったが金色っぽかった。


それにところどころリナの面影がある。


俺はひらりと私の前に飛び降りると、その少女の後ろ手の縄を一瞬でほどいてやった。


「大事ないか?」

俺が声を掛けると


「ルヴィ?」

少女が声をかけてくれたのだ。

間違いない。


「えっ、お前、リナか?」

俺はリナの顔をまじまじと見たのだ。

転けて少し汚れていたが、そこにはとてもきれいになったリナがいたのだ。


「ルヴィ!」

リナが俺に抱きついてきたのだ。

涙を流して。


「リナ、大丈夫か?」

俺はリナをきつく抱きしめていた。

リナをこんな目に合わせるなんて!

メンロス王め、何が大切にするだ!

絶対に許さない。それとリナの婚約者もだ。


「リナ、もう大丈夫だ。ここからは俺に任せろ! リナを泣かした奴は俺が成敗する」

俺はそう言うと、後ろを振り返った。


男たちが何か囃し立ていたが、もう許さない。雑魚は叫ぶだけ叫んでいれば良いだろう。

それに男たちはエンゲルとも通じているみたいだった。

「裏切り者は斬る」

「おのれ!」

俺の言葉に男達が剣を抜いて一斉に斬り掛かってきた。


ズン


その瞬間、俺の剣は一閃した。

文字通り一閃だった。


「リナに無礼を働いたことをあの世で反省しろ」

俺はリナに狼藉を働ころうとした男たちを成敗したのだった。

男たちは真っ二つになって国境の柵に飛んでいった。

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