第5話 白馬の騎士は私の想いを込めて衛士達をやっつけてくれました

私の目の前に現れた騎士様はとても凛々しくて格好良かった。

まあ、誰でも、こんな時に現れてくれたらとても頼りがいがあってよく見えるものだが……彼はとても整った顔立ちをしており、堂々としていた。


彼はひらりと私の前に飛び降りると、私の後ろ手の縄を一瞬でほどいてくれた。


「大事ないか?」

騎士様が私に声をかけてくれた。

その横顔がどこかで見覚えがあった。


「ルヴィ?」

私は昔王宮にいた少年の事を思い出していた。ルヴィは私が小さい時に王宮にいて、私とよく遊んでくれたのだ。確か、お母様の実家の帝国の伯爵家の傍流で遠い親戚だとかいう話だった。何でも、お家争いに巻き込まれたとかで少し預かるという話だった。私は一人っ子だったので、兄のような存在が出来てとても嬉しかったのを覚えいている。ルヴィはお家争いが落ち着いたとかで1年くらいして帰って行った。あの時は9歳くらいだった。あれから15年が経っていた。

あの時からイケメンだったけれど、これがもしルヴィならば、更にイケメンになっていた。


「えっ、お前、リナか?」

騎士が私の親しきものからの呼び名、リナと呼んでくれた。良かった。ルヴィだ。

本当にルヴィなんだ。あの9歳の時に私と遊んでくれたルヴィはとても立派になっていて私を守ってくれたのだ。


「ルヴィ!」

私は思いっきり、ルヴィに抱きついていた。

そして、同時に私の幸せな子供時代のことを思い出していたのだ。もういないお父様のこともお母様のことも……私の目から涙が止めどもなく流れてきた。


「リナ、大丈夫か?」

ルヴィが私をきつく抱き締めてくれた。

そして、私の涙を脱ぐってくれたのだ。


「リナ、もう大丈夫だ。ここからは俺に任せろ! リナを泣かした奴は俺が成敗する」

そう言うと、ルヴィは後ろを振り返ってくれたのだ。


「何だ何だ。お姫様を守る騎士気取りか? それともお前はハウゼンの残党か?」

「ふんっ、お姫様を守りに今頃出てきたのか?」

「遅いじゃないか。もうお姫様はメンロスの王太子に婚約破棄された後だぜ」

男たちが囃し立てた。


「どのみち、俺達が楽しんだ後は、エンゲルの奴らに下げ渡されるんだ」

「貴様はここで俺達に捕まって、指を加えてみておきな」

男たちは下ひた笑みを浮かべた。


「せっかく、今まで生き延びてきたのに、姫様を守るために出てきてやられていちゃー話にならないぜ」

「何しろハウゼンの貴様ら残党には懸賞金がかけられているんだぞ。素直にお縄につけ」

衛士達が、ルヴィに場違いな声をかけていた。


「貴様等、メンロスの兵士だろう。メンロスはハウゼンの同盟国だと思っていたが」

ルヴィが言ってくれた。


そうなのだ。


同盟国とは相手国が助けを求めた時は助けるのが、同盟国ではないのか? 私はメンロスの奴らに言いたかった。


「ふんっ、何をふざけたことを、言っている。ハウゼンはもう滅んだんだよ」

「滅んだ国との同盟なんぞとっくの昔に無くなっているさ」

「なに言ってるのよ。あなた達、同盟していても、ハウゼンの危機の時に助けてくれなかったじゃない」

私が後ろから叫ぶと、

「当たり前だろう、同盟していても、弱い国はあっさり見捨てられるのさ。そんな常識も、知らないのかい。お嬢ちゃん」

衛士が、言ってくれたのだ。


「ふんっ、心のない風見鶏の国の連中はよくそう言い訳をしてくれる」

ルヴィは笑って言っていた。


「強いものについて何が悪い」

衛士がムキになって叫んだ。


「最初からその国についていれば何も言わんよ。ただ、同盟国が負けそうになったとたん、その同盟国を裏切って強い国についた卑劣な国は二度と信用されん」

ルヴィが、言ってくれたのだ。

「裏切り者のメンロス王国ももう先は長くはなかろう」


「ふんっ、負け犬のハウゼンの残党がよく言うぜ」

「死体でも高値で引き取ってくれるんだぜ、エンゲルは」

「ここで貴様をやってやるぜ」

男たちはそう言うと剣を抜いた。


「ふんっ、愚かなやつらだ。どちらが強いかもわからんとは」

ルヴィが鼻で笑ってくれた。


「おのれ!」

怒った男達が剣を抜いて一斉に斬り掛かっていった。


ズン


その瞬間、ルヴィの剣が一閃したのだ。


文字通り一閃だった。


「リナに無礼を働いたことをあの世で反省しろ」


そうルヴィが呟いた瞬間だ。男たちは真っ二つに両断されていた。

私に襲いかかろうとしていた男たちは言葉もなく吹っ飛んでいったのだった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

アデリナに狼藉を働こうとした衛士達はルヴィの剣の一閃の前に倒されました。

話はまだまだ続きます。


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