第6話 隣に寝ていたルヴィが襲ってきた敵にナイフで刺されました
「リナ!」
男達が血が吹き出すのを見た瞬間、私は今までの心労もたたって気を失っていたのだ。
倒れる瞬間、ルヴィに抱きかかえられたのまでは覚えていたが……
私は夢を見ていた。
まだ、お父様とお母様が生きている時で、私は小さかった。
王宮の裏の森の中で皆で、ピクニックをしていた。
私は大きな玉子サンドを大きな口を開けて、食べていた。でも、さすがに大きすぎて、顔中、玉子だらけになっていた。
「もう、リナは仕方がないな」
そんな、私の顔を、ルヴィが拭いてくれた。
「リナ、サンドウィッチを食べるときは、もっと口を小さくして少しずつ食べるのよ!」
お母様が注意してくれたが、
「だって、早く食べて、ルヴィと遊びたいんだもの」
私が言うと、
「ゆっくりで、良いよ。リナが食べる迄はちゃんと待っているから」
ルヴィはそう言ってくれたが、
私は「大丈夫!」
そう言うと最後の大きな一切れを口の中に放り込んだのだ。
そして、喉につまらせた。
「大丈夫か、リナ!」
ルヴィが慌てて私の背中を聞いてくれたが、私は喉に詰まらせて、盛大に咳をして、そして、ハッとして目を覚ましたのだ。
「大丈夫か?」
私は目の前にルヴィの端正な顔のドアップを見て、少しドギマギした。
あのルヴィがこんな立派になったんだ。
「助けてくれて有難う」
「いや、俺こそ、遅くなった。おのれ、メンロスの国王め。リナを大切にしているなどとよくも嘘をついてくれたな」
ルヴィは私のために憤ってくれた。
「有難う。ルヴィ。でも、私なんかを庇ってくれて良かったの? 私はもう王女でもなんでもないわ。帝国の騎士のあなたに迷惑がかかるんじゃないの?」
私は心配して聞いていた。ルヴィの姿かたちはどう見ても立派な騎士のそれだった。ルヴィは帝国に戻って立派な騎士になったんだ。私はそれが嬉しかったのだ。
「騎士か。まあ騎士団には所属しているが」
戸惑ったようにルヴィが言ってくれたが、
「私も体格を見れば騎士かどうかわかるようになったの」
私が自慢して言うと
「そんなに何人も見たのか」
何か少し嫌そうにルヴィが言って来た。何か機嫌を損ねるようなことを言ったのだろうか?
「そうでもないけれど、私の護衛をしてくれる騎士は皆ルヴィのようながっしりとした体格をしているから」
私が言うと
「まあ、普通はそうだけどな。俺はまだまだだって騎士団長には言われているからリナにそう言ってもらえると嬉しいよ」
頭を切り替えたみたいで、ルヴィは喜んでくれた。
「でも、本当にハウゼン王国の件は悪い事をした」
「有難う、ルヴィ。あなたにそう言ってもらえるだけで十分よ」
「何を言っているんだ、リナ。俺が困っている時に、君のご両親は俺を庇ってくれた。君の国に何のメリットもないのに。エンゲルからの俺を引き渡せという要望を蹴ってくれたんだ。俺はメンロスのような裏切り者になりたくない。だから、本当にすまん。ハウゼンの滅亡を救えなかった。申し訳ない」
ルヴィが頭を下げてくれた。
「何言っているのよ。帝国の騎士のあなたじゃ救いようがないじゃない」
「いや、俺は丁度その時は、帝国の北部にいたんだ。ハウゼンにエンゲルが攻め込んだのを聞いて慌てて駆けつけたのだが、俺が駆けつけた時はもう戦いは終わっていた」
「有難う、ルヴィ、いろいろ無理してくれたんじゃないの?」
私が言うと、
「無理も何も無いだろう。君たちは俺の命の恩人なんだ。その恩人がこのような目に遭って、俺は許さない。必ずエンゲルにも相応の罰は与える」
「有難う、ルヴィ、お言葉だけ受けておくわ」
私は首を振った。
帝国の一騎士のルヴィがいくら頑張ってくれた所でやれることはしれているのだ。それに無理はしてほしくない。
「あのう、それよりもルヴィにお願いがあるの」
「何だい。リナ。なんでも出来る限りの事はするが……ハウゼン王国を復活させるか?」
「ルヴィ、それはなかなか難しいと思うの」
「そうか? 君が旗頭になればすぐに1万は集まると思うが」
「それよりも、どこかで地に足つけて普通に生活したいの! どこか良いところはないかしら?」
「それならば、とりあえず、帝国に来れば良いんじゃないか? 帝国なら、エンゲルの奴らも手を出せない。そこで、落ち着けば良いだろう」
ルヴィが言ってくれた。
「帝国か」
私は帝国には行ったことはなかった。ルヴィの故郷か、どんなところなんだろう?
「帝国には君の母上の親戚もいる。皆歓迎してくれるよ」
ルヴィは言ってくれたけれど、親類といえども元王女に来てもらっても困るだろう。私は蘇った記憶で平民として普通に生活は出来るはずだった。だから、平民として生活していこうと思っていた。
ルヴィは反対しそうだけど、まあ、それはおいおいと話せばルヴィも判ってくれるだろう。
ルヴィはこれから帝国に帰るので一緒に連れて行ってくれるらしい。
ルヴィと一緒だと安心だ。私はホッとしたのだ。
「そうと決まればできる限り早く移動したい」
ルヴィが言ってきた。聞く所によると私が気絶したので、ルヴィは慌てて私を国境の町のこの宿に連れてきたのだそうだ。私は記憶が蘇った知恵熱もあり2日間も寝ていたらしい。
追手がかかっていたらまずいからできるだけ早くに、海岸線に出て、船を捕まえたいとルヴィが言ってくれた。
私達は寝ることにしたのだ。
一部屋しか取っていないとのことでルヴィに謝られたが、気絶した私が悪いのだ。
部屋はツインルームで、ベッドは2つあった。
私はルヴィが買ってくれていた簡単な食事を食べてそのまま、また、熟睡したのだった。
その夜だ。私は変な予感がして、はっと目を覚ました。
その時だ。ベッドの向こうにナイフを持って立っていた男を見つけたのだ。
私が叫び声を上げるよりも早く、男はルヴィが寝ているベッドの上から思いっきりナイフを突き刺したのだった。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ルヴィの運命やいかに?
続きは明朝です。
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