第4話 衛士達に襲われそうになった時に白馬の騎士が現れました

私は両手を捕まれて後ろ手に縛られて、パーテイー会場から連れ出されたのだ。

会場にいた皆の私を見る蔑みの目が辛かった。


私を裏切って嘘をついた者たちは私が睨むと良心の呵責を感じたように思わず視線を逸らしてくれたけれど……それがどうしたというのだ。


後ろ手に縛られて引き立てられるとバランスを取りづらくて何回かこけそうになった。その度にどっと笑われたのだ。私はとても悲惨だった。


私は衛士たちに引き立てられて、学園の外に止められていた護送馬車に乗せられた。


わざわざ護送用の馬車まで準備していたという事は、アヒムはこのパーティーが始まる前から、元々私を捕まえる気満々だったのだ。


普通、生国がエンゲルの野蛮王に占拠されて、行く当てのない王女を国外追放にするか!

アヒムは鬼か! 私は叫びたかった。


私がわざわざこのメンロスの学園に入学したのはエンゲルス王国に引き渡されるためだったのか?


そもそも、ハウゼン王国の王女である私がこのメンロスに来たのは、メンロス王国側から頼まれたからだった。

メンロスの国王陛下は何故か私をとても買ってくれていたのだ。

私は絶世の美女と近隣諸国から謳われた母ほど美人でもなかったし、母の出身も確か帝国の伯爵家の傍流だと聞いたことがあるくらいで、決して血筋が良いわけではない。まあ、ハウゼン王国は海に面しており貿易王国で、歴史もメンロスに比べたら古かったが、それだけだった。

それも、国は既にないのだ。しかし、陛下は親切で亡国の王女になってもこの国においてくれたのだ。

何故、陛下が私をそこまで大切にしてくれたのか判らなかったが……


その陛下も今日は帝国に招かれたとかでいなかった。アヒムはその国王がいないタイミングで私をエンゲル王国側に引き渡そうとしたのだろう。


どうしよう。小説では国境の外で待ち構えているエンゲル側に私が引き渡されて、元ハウゼン王国の王都に連行されて、処刑されるのだ。

それは最悪だった。せっかく前世の記憶が蘇ったのに、その情報を何一つ使わないなんてもったいなさすぎた。前世どうやって死んだか判らないが、あまり年いってからの記憶がなかったから、おそらく病気か事故で早死したのだ。今世は長生きしたかった。


でも、その前に、確か、破落戸共に襲われるのだ。

小説ではアヒムがクラーラを破落戸に襲わせようとしていたアデリナを許せずに、国境で破落戸共に襲わせるのだった。


もう、アデリナの人生は小説では最悪だった。


どうしよう? なんとかして逃げ出さないと。


しかし、馬車の中は二屈強な衛士が二人もいて、私一人では到底逃げられそうにもなかった。

それに後手に縛られていたのだ。

どうしようもなかった。


そうだ! せっかく異世界転生したのだから、何かチート能力か何かが与えられていないだろうか?普通は特殊な能力が与えられているはずだ!

魔術はどうだろう?


「出でよ、火の玉」

私は小さな声でいろいろ呪文を唱えてみたが、出てこない。

そもそも私は魔術はほとんど使えなかった。前世の記憶が戻ったからと言って急に使えるようにはならないらしい。

私は焦っていろいろやってみたが、何も出来なかった。


そして、あっという間に1時間が経ち、馬車は国境についたのだ。


「よし、降りろ」

私は闇夜に馬車を降ろされた。


国境の砦の外は荒野が広がっていたのだ。


そこには入国待ちの人の物なのか多くのテントが点在していた。


野宿している人もいる。


その中に私は後手に縛られたままで、降ろされたのだ。


「えっ、縄は?」

「残念だったな、お姉ちゃん。縄は縛ったまま降ろせと、クラーラ様からは聞いているんだよ」

衛士の男たちは馬車を降りながら言ってくれた。

私の後ろにニヤついた男たちは5人くらいいる。全員衛士の格好していたが……


「クラーラ様は俺達に駄賃として楽しみたければ楽しんで良いって言ってくれたんだ」

「そうだぜ。せいぜい楽しませてもらおうか」

男たちは私に迫ってきたのだ。


えっ、何、こいつらひそょっとして私を襲うつもりなの?

私は慌てて駈け出した。.


「助けて、母様」

私は思わず呟いていた。


「はははは、面白いことを言うな、お姉ちゃん。お姉ちゃんの母上はもう断頭台の上だぜ」

く、くそう、こんな奴らにやられるのか!


私はそう思った瞬間、足がもつれて盛大にこけていた。

「助けてルヴィ!」

私はしばらく忘れていた少年の名前を叫んでいた。


「ほう、誰だい、それは、王子様の名前じゃなかったな」

「故郷に恋人でも残してきたのかな」

「その恋人の代わりに俺達がお前を楽しませてやるぜ」

男達が私に迫ろうとした時だ。


私の前に突然白い物体が出現して、先頭の男を弾き飛ばしてくれたのだった。

「ぎゃあっ」

男は跳ね飛ばされて、柵に突き刺さっていた。


「えっ」

私は目の前に現れた救世主をまじまじと見た。

それは白馬に乗った騎士様だった。

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ここまで読んで頂いて有難うございました。

さっそうと現れた白馬の騎士。どうなるアデリナ?

続きは明朝です。

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