第3話 公爵令嬢視点 恋敵を南の蛮族の王の生贄にすることにしました

私はクラーラ・アプト、このメンロス王国の公爵家の令嬢だ。

我が家はこの国では王家の次に地位が高い。

同い年にアヒム王太子殿下がいて、私は殿下とは幼馴染だった。殿下はとても見目麗しかった。

対する私もピンクのアプトの薔薇と近隣諸国にまで響き渡る美女で、当然、私がアヒム様の横に並び立つと思っていたのだ。

あの青髪の生意気な王女がこの国に来るまでは……


東隣のロンメル王国のもう一つ向こうの隣国、ハウゼン王国の王女は青髪の地味な顔立ちの女だった。

そして、学園に留学してくると同時に、美人の私を押しのけてアヒム様の婚約者になったのだ。


私は許せなかった。


そんな私にアヒム様は

「クラーラ、申し訳ない。アデリナの件は強引にハウゼン王国が押し込んできたのだ。ここは我慢してくれ」と言われた。


「いずれなんとかするから」

とも。

そう言われれば、私としても納得するしか無かった。


しかし、アデリナは生意気にも私によく、

「アヒム様には私という婚約者がいるのですから、クラーラ様もあまり、アヒム様に近寄られないほうがよろしいのではなくて」

と言ってくれたのだ。


本当にムカつく。アヒム様は私の方が良いと言ってくれているのに。お前こそ自国に帰れば良いのに! 私は何度そう思ったことか!


こうなれば学園で虐めてやろうと私は考えたのだ。幸いなことに私は友人も多い。

でも、将来のことを考えて、私の派閥からも何人かがアデリナの元に走ってくれたのだ。

私は歯ぎしりしてそれに耐えた。


いつの間にかアデリナは一定の勢力を作って、私に対抗してきたのだ。


私がどれだけ悔しかったことか!


そんな我家にハウゼンの南の大国、エンゲル王国より、友好の使者が来たのだ。まあ、エンゲル王国を南の蛮族と蔑む向きもあるが、我が家はアデリナに対抗するために、使者を歓待した。


それから何度かエンゲル国より使者が来るようになった。どうやら、エンゲルはハウゼンに攻め込もうとしているようで、その時はこのメンロス王国からハウゼンに援軍が出ないようにしてほしいと頼んできた。我が家としてはアデリナの母国が攻め込まれて勢力が弱まるのは願ってもないことなので、出兵には反対する旨を返事した。


エンゲル王国はハウゼンの少数民族を中心に反乱を起こさせて、そこに援軍と称して攻め込んだのだ。

ハウゼンの有力諸侯が裏切ったこともあって、エンゲル王国は1年後にはハウゼンを占拠してくれたのだった。

これは思った以上の成果だった。まさか、ここまでうまくいくとは思ってもいなかったのだ。


攻め込まれた時にアデリナは、アヒム様に泣いて援軍を頼んだのだが、アヒム様は私達が流したハウゼン国王の圧政が原因で反乱が起こったという理由を信じてくれて、

「自業自得だろう」

とアデリナを突き飛ばしてくれたのだ。


本当に胸がスカッとした。


亡国の王女となったアデリナに味方する者は、あっという間にいなくなっていた。


エンゲルの国王が側室にアデリナを求めていると使者から聞いて、父は何度も国王陛下に、「母国の無くなった王女など送り返してはどうです」と言ってみたのだが、国王陛下はなかなか頷かれなかった。アデリナをエンゲルに渡せばエンゲルに恩を売ることになるし、邪魔者もいなくなるのだ。これほど都合の良いことはなかった。


しかし、陛下は中々認められなかったのだ。情が厚いと言うか、何か別の理由があるのかは判らなかったが……


その国王陛下が帝国に招かれて訪問されると決まった。

ちょうど学園の卒業パーティーと重なる。その時にアデリナを国外追放してエンゲルの使者に引き渡せば丁度良かろう。私はアヒム様の側近たちといろいろと画策したのだ。


エンゲル国王は酷薄な性格をしていて、側室を慰み者にする性癖があるのだとか。それでなくてもアデリナがあの中年の豚のようなエンゲル国王の側室にされるのだ。これほど痛快なことはなかった。その上更に慰み者にされるとなると、泣き叫ぶアデリナの姿が目に浮かぶようで私はとても嬉しかった。


更に私は元々私の勢力に属しておきながら、アデリナ側に裏切った者達を呼び出した。


彼女らは必死に謝ってきた。コイツラを許すのは癪だが、後々またいじめれば良い。とりあえず、アデリナが私にいじめをするように指示していたと偽証するように強要したのだ。彼女らは二つ返事でこの案に飛び乗ってくれた。

これであの憎きアデリナを処分できる。私は期待に胸を膨らませたのだ。



そして、待ちに待ったアデリナ断罪の時が来た。


パシーンとアデリナを思いっきり張り倒した時の気持ちよかったことといったら無かった。


そして、味方だと思っていた者たちが次々に裏切って偽証していく様に、アデリナは絶望していた。


私はそれをほくそ笑んでみていたのだ。


最後に衛兵に連行される悲壮なアデリナの顔は本当に笑えた。


でもこれはまだ序章に過ぎないのだ。

これからアデリナは国境にてエンゲルの野蛮王の部下に下げ渡されて、野蛮王の元に送られるのだ。両親を殺させた張本人の側室にされるのだ。これほど痛快なことはなかった。

私は高笑いが止まらなかった。

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