第3話:本当のところ。

ディンプルは俺の彼女になった。

何も知らない俺は、ディンプルのことを普通に人間の女だと思っていた。

そのくらい完璧だったからだ。

触れることもできるし、彼女の鼓動や吐息さえ感じられた。


最初は罰ゲームの戯言だったはずが、今はディンプルに本気になってる俺がいる。

少しづつディンプルに惹かれていく俺。


大学では俺とディンプルは決まって食堂にいることが多い。

でもって、俺はディンプルのことが知りたいから根掘り葉ほり彼女に

聞くわけ。

だけどディップルは言葉をはぐらかして、なかなか自分のことを言おう

としない。


「あのさ彼氏に何にも教えてくれないんじゃ付き合ってる意味ないじゃん」


「だって・・秘密だもん」

「そうやって隠されるとさ、余計知りたくなると思わないか?」

「ディンプルは俺がいてもいなくても、どっちでもいいんだ」


「そんなことないです・・・・私にとって俊介ははじめての人だし

「そう言う意味じゃ貴重な人だもん・・・」


「それは分かるけど・・・なにか隠してるなら言ってくれないと・・・」

「俺のことは一応話したよね・・・だったらディンプルのことだって

知りたいって思うだろ」


「どうしても教えてくれないなら、もう罰ゲームも終わったし・・・

俺たちの関係、解消するか?」


「なんで、そんなこと言うの?」


「先が見えないんじゃ一緒にいる意味ないだろ?・・・」


「ヤダ・・・」

「あ〜ん、だって、極秘なんだもん、誰にも言っちゃいけないんだもん」


「極秘ってさ・・・なにをしようっての?」


「もうやってる最中」


「なにを・・・なにやってんだ?ディンプル」

「ディンプル!!」


「分かった、別れよう」


「ヤダって・・・私、俊介のこと好きなの・・・別れない!!」


「本当は俊介本人には言っちゃいけないことになってるんだけど・・・」

「私の中で想定外のことが起きたの・・・それはね、俊介を愛しちゃったこと」

「だから全部しゃべっちゃうね」


ディンプルはなんで自分が生まれたのか、自分の正体、なんで大学に転入して

きたのか?なんで、俺と付き合ってるのか?

全部俺に話した。


「うそ〜・・・ディンプル・・・人間じゃないのか?・・・まじで?」

「バーチャロイドって・・・仮想?」

「だって、幻影とかじゃなくてちゃんと触れるじゃん、人間と同じように」


「私、ガイメック社って会社が一般男性に提供するために作られたAI搭載の

ホームオートメーションシステムなの。

いずれ私のあとに、たくさんのバーチャロイドが量産されることになってて

その為に今、データ収集してる最中・・・」


「その対象になったのが俺ってわけか?」


「うん、だから私は自分のノルマを果たしたらガイメック社に戻らなきゃ

ないらいの・・・本当はね」


「なんだよ、それじゃ俺はなにも知らないまま騙されてたのか?」


「私は、ただ会社の社長に言われたとおりにしただけ・・・悪気は

なかったんだよ」

「俊介を好きになっちゃった今、私もうガイメック社に帰りたくない」

「ごめんね・・・俊介を騙したみたいな形になっちゃって・・・」

「俊介・・・私を許せない?」


「そうか・・・なかなか気持ちの整理をつけるのに時間かかりそうだな」

「まあ、でもとりあえずはよく話してくれたよ・・・」

「心配しなくていい、別れるなんて言わないから・・・ディンプルの気持ちも

分かるし、俺もそこまで器の小さい男じゃないからさ」


「でも、俺に全部知られた以上、ガイメックの思惑は崩れたわけだろ?」

「実験は失敗で終了だな」


「バレたら、私はガイメックに回収されちゃう」


「黙ってりゃいいじゃん・・・これはあくまで極秘なんだから・・・

がんんばってま〜すって言っときゃいいんだよ」


「ダメなの、バレなくても結果的にデータ収集が終了した時点で私はガイメック

に回収されることになってるの・・・」

「そうなったら俊介と別れなくちゃいけない・・・」

「ヤダ・・・そんなの・・俊介と別れたくない」


「ああ、結局最終的にそうなっちゃうのか?」

「そうなんだ・・・ディンプルをガイメックに戻さない方法ってないかな?」


「あのね、私の姿を構築してるハードが会社にあるの・・・だからその

ハードから私を切り離せばイケるかも・・・」


「どうやって?」


「私には会社のハードのほかに、独立したポータブルデバイス「端末」があるの」

「念のためにと、私を作った徳常とくつねさんって人が、会社には内緒で私に

持ち運びできるデバイスを作ってくれてたの」

「だから徳常さんに頼んで、私のデータをそっくりデバイスに移してもらって

会社のハードから切り離してもらえば、そしたら私、独立できるかも・・・」


「なるほどな・・・ちょっと複雑だな、俺はそう言うの疎いからな」

「で、そのポータブルデバイスってどこにあるんだ?」


「徳常さんが持ってる」


「で、その徳常さんってのは、どこにいけば会えるんだ?ガイメック社か?」


「うう〜ん、私と一緒にマンションに住んでる」

「私ひとりじゃ心細いもん」


「へ・・・それはまた・・・」


「徳常さんは私のお父さんみたいな人だから・・・」


「ディンプルの製作者ってわけか・・・」

「ならその徳常さんって人、ディンプルに情が湧いてるな・・・もしかしたら・・・」


「さっき言ったこと頼めるかも・・・」


つづく。



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