第2話 冨樫ゆう

虹は俺を好いている。

夢色が好きだとはっきり言っている。

大好きだと。

愛をいくつも虹は表現しているが。

軽くあしらう程度に俺は虹を見ていた。


何で俺なんぞを好きになるのやら。

その中で「冨樫さんという女子に告白された」と虹に打ち明けた途端目の色を変えた。

ショッキングな感じで冨樫を追おうとする。

直ぐに冨樫ゆうという女子を探し始めた。


そんな虹に背後から俺は「待てコラ!」と声を掛ける。

虹は振り向く。

追いかけて来ていたのに気が付いた様だ。

そんな虹は「夢色。私は貴方を渡さないからね!」と逃げる。


「絶対に渡さない。だって私は」


そう言いながら逃げまくる虹。

大切な事だから、と。

俺は大慌てで追う。

だが虹色は逃げてしまう。

あの野郎!


「虹!お前!まだ冨樫と付き合うと決めた訳じゃねー!」

「そうだけど!私、貴方が好きだし!」

「コラ!大声を発するな!」


俺はそう怒りながら虹を追う。

そして虹は何を思ったか冨樫ゆうの居る教室に向かう。

それから「冨樫ゆうさんは居ますか!」と声を荒げる。

教室の人達が思いっきり凍りついた。


「へ?」

「彼女って...」

「ああ。確か5本指に入る究極の美少女の作田虹さんだ...」


クラスがざわつく中。

彼女が顔を見せる。

全身が白色。

真白白雪姫と呼ばれている冨樫ゆうが。

顔をゆっくり見せてから真顔のまま真白白雪姫は虹を見る。


「はい。私が冨樫ゆうですが」

「何で学園の美少女がおに...じゃなかった!夢色に接触して来るんですか!?そんな夢物語ってあります!?」

「いや。お前も美少女だけどな。大概」


そう言いながら俺は虹をジト目で見る。

冨樫さんは全く反応を揺るがさず「で?」という様な顔をする。

虹は唖然としながら冨樫さんを見る。

それから冨樫さんは清楚なままゆっくり氷が解凍するかの様に口を開いた。


「私は彼。つまり作田さんが好きですから」

「はい!?」

「「「「「ハィ!?」」」」」


教室が固まった。

その中で冨樫さんは不愉快そうに「大声を発する獣の様な貴方には分からないでしょうけど。私は大切な人には一途で冷静で居ます」と言葉を発した。

俺は真っ赤になりながら冨樫さんを見る。

するとそんな冨樫さんに何か言いたげな感じで話を聞いていた虹が口を開く。


「私の愛は...貴方以上です!」

「...そうですか?でもすいません。貴方は本当に作田夢色さんの意思を尊重していますか?そうには見えませんが」

「わ、私は...」

「貴方、自己勝手ですよね。虹さん」

「そ、そんな事無いもん」


「作田さんに告白を勝手にしたことは謝りますが。ですが貴方のモノではありませんよ。作田さんは。オモチャではありません」と厳しめに叱責を虹にした。

それから虹を見据える。

虹は弱々しく「...」となる。


それから虹は悔しげな感じだったがそのまま去って行く。

俺はその姿を見てから冨樫さんを見る。

冨樫さんは俺を見ながら「...ではまた」と柔和になった。

スゲェなこの人。


そう考えながら頷いてから教室を後にした。

それから俺は虹の背後を歩く。

すると虹が「私...だって夢色が好きなんだもん」と反応する。

俺は無言で虹を見た。

虹は「...今回は悪かったけど。だけど私は」とブツブツ言う。


「虹」

「何。夢色」

「...お前が俺を好きなのは嬉しい」

「...うん」

「こういうのもお前には必要だったのかもな」


言いながら虹を見る。

虹は「...そうなのかな」と珍しくしょげながら落ち込んでいた。

俺はその姿に虹の頭を撫でる。

それから虹に「お前はよーやってるよ」と声を掛ける。


「夢色が好きだから。私、諦めない」

「大人の事情も理解した上で、な」

「そうだね...」


俺は虹をヨシヨシした。

それから笑みを浮かべる。

虹はされるがままで居ながら目を細めながら笑みを。

口角を少しだけ上げた。

俺はそんな姿を見ながら「戻ろう。教室に」と話した。

虹は頷いてくれた。


やれやれだな。

だけど素直になってくれたのは有難いものだが...冨樫さんのお陰か?

思いながら俺は教室に帰った。

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