晴天
椅子に掛けられている服……羽織物だったら置いてあるんだろうなって思うんだけど。
「これは洗いますか?」
「そのままでいい」
「そうですか、わかりました」
カゴにすでに入っていたものと、汚れが気になる衣類を突っ込む。
「では、洗濯してきますね」
共同で洗濯できるところへ向かう。近づくにつれて、女性の割合が増えてきた。
水が出てくるところへ桶を置いて、上下にポンプを動かす。初めのうちはテンションが上がっていたけれど、そろそろ日常的になってきたかもしれない。ちょっと大変。
魔法を使って楽々やってるご婦人もいらっしゃるけど。
裾が濡れないよう、スカートをつまみ、裸足でじゃぶじゃぶ。手でするより疲れないけれど、わたしには億劫で。
「水流」
桶の中で水の流れをつくる。洗濯機には程遠いけど、わたしの中では画期的な方法。
「すごい、魔法ですよね!?」
小学生くらい? 家のお手伝いかな。
「こんにちは。井戸使います?」
「ありがとうございます! 人多くて、どうしようかと思ってました」
陽が出ているうちにやりたいから、そうなってくると、人の動きは同じになってくる。
「なんていう詠唱ですか?」
魔法を使うときに唱えるやつねー、どうしようか。英語で言えたらかっこいいのにね。
「ごめんなさい、困らせちゃって」
遠慮ぎみに笑うと、女の子は裸足でじゃぶじゃぶと始めた。
「こっちこそっ……すぐに言えなくてごめんね。水の流れをつくってるだけで、かっこいい事は何もしてないから」
「水の流れっていうのは?」
服をゴシゴシと動かさなくても、水の働きである程度は汚れが落ちることを説明した。
「そうなんですね! 覚えておこうっと。もう少し魔力が使えたら、やってみたいな」
この世界で初めて出会った人がエルフだったから、この年頃の子たちを何も知らないなぁ。
「学校へ行ったりしてるの?」
「初等部は行っておきなさいって、お父さんもお母さんも言うんです」
基礎を学ぶ感じなのかな。
「がんばってるんだけど上手くいかなくて。もっと自由にやってみなさいって、いつも言われるんです」
積極的や、消極的とか? 聞いててそういった意味が浮かんできた。
生まれ持った何かが必要だったりするのかも。知らない間に与えられたわたしが教えられることって無いんじゃない?
洗い終わるのをきっかけに、女の子とは別れた。
水気を含んだ衣類は重くなる。階段を上がって、ベランダへ直行。袖から棒を通していって、ちょうど襟の部分が曲がってるのがポイント。
物干し竿に通していって、洗濯終わり。
風に服が揺れる。
「わざわざ出て洗わなくても、魔法がある」
「魔法で洗濯するという感覚が、わたしにはわからないので。それに、晴天での洗濯、気持ちいいと思いません?」
貴方は深呼吸した。
「そうかもな」
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