朝食には

 少し冷える朝、鳥のさえずりに安心して、窓に手を伸ばした。


 大きな山々、大きな翼……たぶん、ドラゴン。やっぱりファンタジーの世界。


 木靴を履いて、階段を下りる。少し猫背の後ろ姿と寝癖、安心感が戻る。


「おはようございます。何か手伝います」

「簡単なものしかやってないから、必要ない」


 貴方が言う通り、お皿にパンが盛られてあって、続いてスープが机に並んだ。


「そんなにやりたいなら、お茶でも淹れるか?」


 ガラスのポットに、水が入る。ぱっと見た印象はIHコンロに思えた。そこにポットが置かれた。

 強火、弱火のボタンは無い。魔法でなんとかしてしまうんだろうけど、細かな調整はしない感じ?

 具体的に想像して言った通りになってくれる、わたしにはそういう魔法が使えるようで。


「……点火」


 コンロは青く光り、次第に水は沸騰する。机に広げられた鞄の中身。並べられているビンをひとつ取った。柑橘系の良い匂い、これにしよう。沸騰したポットへ入れた。


 くるくると茶葉は回転して、赤色が広がっていく。


「良い匂い」

「もう少ししたら飲めますかね」

「これから朝食には、あんたが淹れたものを飲む」


 なんか宣言されちゃった。


 元の世界では誰かと住むことがなかった。寝癖のままの、お茶目な男性エルフ。

 誰かと住むって、こういう事なのかな。ファンタジーの不思議な世界なのに、前から居たような知っている景色。



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