第3話 ママの趣味

空音「ゔー、いー」


聞こえるのは、娘の空音の泣き声だ。


最近、イヤイヤ期に途中したらしく、よく不貞腐れている。


最近よく、部屋の隅で呪詛を唱えている妻。


オリビア「聞いてよ、夫。空音たらね?ママ嫌って!この間まで、悠太パパ嫌いって!言ってたじゃない?もう!ママなんて、嫌いって!私、空音に嫌なんて言われたら生きていけない!どうしよ!どうしよう!!!」


テンションの高さが、プロだ。


悠太「妻よ。僕の気持ちが理解できたかな?」


オリビア「……うわぁ…、何ソレ!?」


オリビアはゴミを見る目を向けた。


悠太「……ちょっと、そんなゴミ見る目で僕を見ないでよぉー」


空音「い゙ー。ゔー。やーだーの!!」


オリビアは、空音の声に気づき近づく。


オリビア「ママが嫌じゃなかったのね?髪が嫌?服が嫌?それとも……お口?」


空音「かみ……かみ、い゙ー」


オリビア「あー。髪型ね?」


悠太も覗きに来た。


悠太「お姫様、今日も可愛いけど?どうしたの?」


空音「とっちがっなーいー」


オリビア「夫よ。まだ貴様の気持ちは理解できぬぞ。」


悠太「毎回思うけど、君のそのセリフみたいな、日本語どこから入手するの?」


オリビアが漫画を見せる。


何故だろう………妻の持っている漫画は…。


アニメにも手を出している様なのだが…。


年々…増えている…。


いや…そりゃ……ジャパニーズマンガを楽しんでいるのはいい事だ。


日本語を学ぶのにも良い!


実は、日本に住み出してから、


暇さえあれば漫画を読み!


読み!


読んでいる!!


そして、イラストを描き始め、最近は、自ら同人作家活動をしている。


わりかし人気らしく…、神師なる者達と交流している。


オリビア「昨日は転生系のアニメを見ていた。主人公はみなチートだ。」


空音「ちーと、ちーと。」


悠太「お姫様さま、良いんだよ。真似しなくて。」


空音「むー♪」


腕を組み胸を張っている。


そんな姿は本当に天使のような愛らしさだ。


今の様子を見て将来はどうなるか……ちょっとこわいがな。


悠太「神様〜僕幸せです!」


漫画を抱きしめて悶える夫・悠太。


オリビア「夫よ。漫画を返せ。それは、尊い、オメガバース系で限定品なのだ。」


悠太「あ、はい……。ごめんなさい。Ωって何?尊いってまさか……ピーなピーな方向け??」


オリビア「……腐った脳みそめ!ピー言わせるな!」


空音「……おめがばーす?」


悠太「姫様?忘れような?その単語は、大人になってから覚えような。」


オリビア「夫よ……続きが聞きたいか?」


悠太「……やめてぇぇ……。」


時間は8時を指す。


オリビア「夫よ。時間はいいのか?社畜する時間だぞ?」


悠太「あ!やべ!」


空音「へん、いや!とっちがっなーいーの!」


オリビア「最近、保育所で髪を引っ張られたらしい。」


悠太「あー。それでか……。」


オリビア「空音、ママに見せて?」


空音「まま。ぴょん」


オリビア「ママと同じポニーテールね。髪が金髪なのが原因かも?って保育士の先生が。綺麗な金髪なのに…。」


悠太「子供は珍しいのが好きだから。」


僕は、子供のそんな些細な変化や妻の変化にまだ気づいてなかった。


いや、気づかないフリをしていた。


気づいたら何かが変わる事をわかっていたから……。


でも、妻は明らかに変化している。


妻の家系は、髪の色で魔力量がわかる。


今、妻の髪の色は、半分ぐらい黒だ。


僕と出会った時は、娘と同じぐらい金髪だった。


恐らく…。


悠太は、空音の頭を撫でる。


そうすると気持ち良さそうに目を閉じる娘を見て……少しの不安が過る。


オリビアは、そんな悠太を見つめていて……察したのか。


オリビア「夫よ。2人分稼いでコイ。」


頬にキスをする。


空音「そらねも!ちゅー。」


悠太の頬にキスをする。


悠太「ありがとう。行って来ます!」


空音・オリビア(いってらっしゃい)


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空音「うー、さむい」


空音はリビングに向かう。


リビングのドアを開けると良い香りが鼻孔をくすぐる。


コーヒーとトーストを焼く匂いがしている。


エプロンを付けて、テレビの前に達父。


空音「父。おはよー。」


悠太「おはよう、お姫様。」


テレビのCMが流れる。


よくある学校の募集だ。


「世界が求める魔法の才能をあなたは持っている!」


強いセールストークが耳に入る。


空音「最近、このCM多いね?」


悠太は、コーヒーをカップに注ぎながら答える。


悠太「もうすぐ、受験シーズンだからね。魔法科に行きたい人多いんだよ。」


空音「へー。」


時間は8時を指す。


悠太「あ、やべ。」


空音「ん?」


悠太は、大急ぎで鞄を取りに部屋に行く。


空音「社畜は大変だねー。」


悠太「社畜って……お姫様。どこで覚えたの?」


空音「んー、ママがよく言ってた。夫は社畜って。」


悠太「あ、はい。そうですね……事実です……。」


空音「生活費、稼いで来て下さーい。」


悠太「はい……。」


玄関に向かう悠太。


空音「あ、父よ!今日ね?漫画発売日だから宜しくね。」


悠太「ぇ?」


空音「はい。これね宜しく…。」


悠太「うぎゃー!親子揃ってなんなの?この連携プレーは!!悪趣味だよ!もう!」


空音「宜しくねー。父。」


悠太「ハイハイ……。」


空音の漫画の趣味は、君に似たのかな?


なぜ毎回、限定品をぼくが買わされる。


でも…段々似て来たよ。


喋り方とか仕草とかさ。


心配だよー。

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