間話Part1 浜辺に1人踊る少女
「五月待つ 花橘の香をかげば
昔の人の 袖の香ぞする」
海を横目に1人の少女は浜辺を歩く。靴は履いておらず、素足で進みゆく。
波は彼女の足には触れず、まるで彼女が歩くのに合わせて波が引いていくかのように道を作り出す。
追いかけるかのように足跡が生まれるが儚く消えゆく。
「ふふっ…5月はもう過ぎてしまっているので成り立ちはしませんか…。」
突如立ち止まり彼女は微笑う。
「もうすぐ会えそうです。待っていてくださいね。」
彼女は海を背に向け浜辺の向こうへと進みゆく。そして日差しを浴び、彼女の肩より少し短いが大きく見える麦わら帽子を外し空を見上げる。
「はーちゃん。」
少女は独り。ボソッと発した言葉は誰に聞かれることもなく波の音に飲まれた。
しかし、残ったのは彼女の嗤い声だけである。
それはみんなにとってどんな音に聞こえるだろうか。
いや本人にしか分からないのだろう。
だが、今はただ美しい少女の群青世界であれと願うのみである。
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