第20話 真実は移りゆく時の中に
先輩が何者かに撃たれた。
その瞬間を見てしまった俺ら。あれから色々と忙しく、時折みんなは俯いたり、泣いたりと暗い雰囲気が多々あったが自分はみんなと違って何故か何も感じなかった。
ただただ過ぎていく時間と人の動きを呆然と見ている日々だった。
現実味がなかったのだ。人が突如撃たれるとかは正直漫画や事件くらいのことであり、こんな…あっさりと身近に起こるとは全く持って想像つかないことだった。
確かにあの時先輩と約束した。絶対に守ると。
だが今回のことは前々から知っていないと回避することはできない。俺たちにも、先輩にもどうすることもできなかったのだ。
仕方なくもあり誰が悪いとかはない。
だけど…どうして先輩が撃たれたのか。
音の発生からしてかなり近くで起こっていたのは間違いない。しかし、後ろには誰いなかったのだ。
周りから狙うにしても暗過ぎてよく見えないから厳しいと考えられる。
そう考えると先輩に近い人たち、いわゆる部員の誰かと言うことになる。
必ず見つけ出し、制裁を下さなくては…。
「先輩…着きましたよ。」
「あ、うん。」
今、俺は胡桃夜くんに先輩のいる病室に案内されている。
ドアを開けるとそこには既にみんないた。先輩は....。
「莉花先輩、佐城先輩が来ましたよ。」
泡沫が、ベッドで横になっている先輩に声をかける。
呼吸は落ち着いているが弱っていることには変わらない。
「み....んなそこにいるかい?」
先輩がゆっくりと話し出す。速川さんが止めに入ろうとするが鈴木君が手でそれを制止する。
「います。」
「そうか…。みんな、こんなことになってごめんなさい。」
申し訳なさそうに先輩は謝る。
「そんなことは…」
「いや、ボクが悪いんだ。実はキミ達に隠していたことがある。」
隠し事?一体先輩になにが…。
「それはね…っ!ゲホッゲホッ…ぅ…。」
「先輩!!」
「す、すまない取り乱した。それで、隠し事なんだが。天文部は表向きだとキミたちのイメージ通りだし、体験したことそのままだ。だがあくまでそれは表向きの話。」
「と、いうと…本来は天文部とは違う何かしらの組織っということですか?」
確かに胡桃夜くんのいい通りで間違いないだろうが何かが引っかかる。
なぜ天文部にしたのか…。
「うん、奏多君の言う通り別のことをするあつまりだったらしい。」
「らしい?」
「あぁ、ボクもその辺は詳しく知らないんだ。たまたま昔の活動記録を残している書物を探しているときに棚から本が崩れて来た際に流れ落ちたノートに書いてあったからね。それにあまり当時の詳しい内容は定かじゃないんだ…」
そういうと先輩は下を向いて歯を食いしばった。
「では、何故先輩は撃たれたのですか?」
「それは、ノートの中身を見てしまったらだろう。おそらく知られてはならない、重要なことが記載されていたからね。」
っ!
「なぜ、先輩が見たということを知っているのでしょうか。」
「分からない。だけど一つだけ仮説ではあるが…。ぅっ…」
「先輩!!」
俺は急いで先輩を支える。これ以上先輩に無理はさせられなさそうだ。
「すまない。流石に私もこれ以上は厳しそうだ。だから、一つ知って欲しいことがある。」
それから先輩は淡々と語り出した。
それは俺たち天文部のこれからを決める重要な話であり、想像を絶することだった。
話し終えた先輩は再び横になり、静かに寝息を立てた。
それから俺たちは病院を後にし、近くのファミレスで話し合うことにした。
心が落ち着くこともなくみんな暗い空気だった。
先輩から語られた真実。
1.天文部の本当の組織名は『星群』またの名を『⁂《アステリズム》』
2.『星群』の目的及び活動内容は、星を害する邪神と契約した存在を滅ぼすこと。
3.みんなは邪神の気配を感じることができる。何故なら、みんなは一度邪神に心を売ったことがあるからである。
4.負の感情が強ければ強いほど邪神との契約は強い。
5.今の天文部にはおそらく裏切り者がいる。
(先輩の仮説)
俺たちには出来るのだろうか。関わってしまった以上狙われるだろう。ならばそれに抗うしか方法はない。
不安な俺たちを背に夜空は雲一つなしに所有物の如く星々を輝かせ自らを主張する。
そして、その夜空の下で1人唄う者が歩く。それが進む度に周りの街灯は光を失ってゆく。
「そろそろかな…。」
そういうと周りの空気は一変し、闇がその者を覆う。
次第にその闇は風を巻き起こし、地を揺らす。
『パチンッ』
その者の合図と共に闇は晴れる。しかし、その場には何もなかったかのように先ほどの人物はいなくなっている。
ただ残るのはその者が居たであろうことを示すかのように甘い香りとむせ返るような煙のみ。
「さぁ、全ての
暗き夜はまだ明けぬ。
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